2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730134
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
石橋 郁雄 Aoyama Gakuin University, 経済学部, 准教授 (30365035)
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Keywords | 経済理論 / 経済政策 |
Research Abstract |
本年度は、「最初に政策当局へ協力を申し出た企業にのみ課徴金を免除するという、米国型のリニエンシー・プログラムの長所と短所を理論的に明らかにする」ことを目的として研究を進めた。特に、法的ルールとしての要素を考慮して、より広範な競争構造の下で明らかにすることを意識して研究を進めた。基本としたモデルは、標準的な数量競争及び価格競争競争の両方を包含した一般的な繰り返しゲームである。 まず、「最初に協力を申し出た企業への減免率を増加させると、"査察に最後まで協力しない"という形のカルテルが単調に不安定化する」という性質が明らかになった。他方、「減免率を増加させていくと、"査察に入られるまでは続ける(査察には減免を狙って皆が一斉に協力を申し出る)"という形の、条件付きカルテルの利益率も単調に上がってしまう」という性質も確認された。そこで両効果の量的比較を行った結果、前者の効果は後者の効果を上回るという結果を得た。従って、これらの研究成果より、「最初に協力を申し出た企業に対する減免率は、標準的な数量競争、及び、価格競争を含むかなり広範な産業構造の下で、全額免除が望ましい」という結論に達した。 改正独占禁止法で導入されてから数年を経た現在、リニエンシープログラムの日本国内での利用事例も蓄積されてきたので、来年度はこうした現実の事例との整合性も適宜検証しながら、モデルの説明力を上げていくことを第一に取り組んでいく予定である。
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