Research Abstract |
本年度は,内生成長を伴う2国2財トランスファー・モデルを構築し,援助受入国の家計が移転された所得の用途を自由に選べるひも無し援助が,財の交易条件や要素価格などの変化を通じて成長率や厚生に与える影響を調べた.2本の論文をまとめた. 論文"Aid, growth, and welfare in an interdependent world economy"(大阪市立大学大土井涼二助教との共著)では,ラーニング・バイ・ドゥーイングと部門間の知識のスピルオーバーを伴う2国2財内生成長モデルにおいて,対外援助の成長・厚生効果を調べた.2つの主要な結果を得た.第一に,受入国における資本集約財への消費性向が供与国におけるそれよりも大きいとき,そしてそのときにのみ,ひも無し援助の永続的な増加は共通の成長率を高める.第二に,その消費性向が国の間で十分異なるとき,そしてそのときにのみ,成長促進的な援助はパレート改善的にもなる.そして,主観的割引率が低ければ低いほど,パレート改善に必要とされる消費性向の差はより小さくなる.この論文はIEFS Japan Annual Meeting 2007等4ヶ所のコンファレンスあるいはセミナーで発表され,現在投稿中である. 論文"Aid, nontraded goods, and growth"では,2種類の貿易財,1種類の非貿易財,2種類の生産要素を伴う小国の援助受入国において,対外援助の成長・厚生効果を調べた.ラーニング・バイ・ドゥーイングと部門間の知識のスピルオーバーが内生成長に寄与する.2つの主要な結果を得た.第一に,非貿易財が操業している貿易財よりも資本集約的(効率労働集約的)なとき,そしてそのときにのみ,永続的なひも無し援助の増加は成長率を高める(低める).第二に,非貿易財が操業している貿易財よりも資本集約的なとき,永続的なひも無し援助の増加は厚生を高める.この論文は現在投稿中である.
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