2007 Fiscal Year Annual Research Report
都市労働市場におけるジョブ・サーチ理論のミクロ実証分析:タイの経験
Project/Area Number |
18730159
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
町北 朋洋 Hitotsubashi University, 経済研究所, 研究員 (70377042)
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Keywords | マイクロ計量経済学 / 労働移動 / ジョブ・サーチ理論 / 政策評価 / 都市経済 |
Research Abstract |
失業の要因として、景気循環的要因や哀退地域(産業)から成長地域(産業)への労働移動、および情報の偏在に伴う一時的な摩擦に加え、労働市場を構成する求人企業と求職者の特性・戦略的行動から生じる構造的要因の重要性が高まっている。同時に、ジョブ・マッチングの質を高めるために必要とされる政策プログラムの内容も変わりつつある。最近の研究によって、ジョブ・マッチングの質は求人方法と求職方法によって大きく異なり、市場取引だけでなく、私的仲介者を通じた非市場的取引がマッチヒグの質改善において大きな役割を果たす可能性が示唆されている。労働市場における摩擦の程度、摩擦の発生要因、摩擦の費用などに関する統計的推測を深めることで、公共職業紹介制度の整備が進まない発展途上国への政策的含意を導出する。その際、特に労働者と企業がどのような経路を介して、お互いに探索し、円滑な取引を進めているか、ジョブ・サーチ理論を用いて、都市労働市場構造を深く理解し、マイクロデータによる実証研究を行う。 平成19年度は研究の最終年度ということで、第一年目、第二年目の研究で見いだした研究分野全体の特徴、残る問題点を吟味し、空間ジョブ・サーチ理論の開発をさらに推進する。そこで、ジョブ・マッチングの質と私的なジョブ・ネットワークの関係を描写する理論モデルを作成する。特にネットワークを介して求人・求職双方の情報が完全であるような非市場的取引から、規模が大きく匿名性のある市場取引へと移行するタイミングに焦点を当てて、理論モデルを構築する。この部分は理論的にも不明確であるため、国内外への研究出張をつうじて近隣諸分野の専門化とのディースカッション集中的に行う。この間の研究経費は、理論モデルを構築し、実証研究を行うまでの図書資料購入、国内外の研究集会出張にあてられる。そこで得られた議論にもとづき、研究をまとめてゆく。
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