2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730206
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
肥前 洋一 北海道大学, 大学院経済学研究科, 助教授 (10344459)
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Keywords | 住民投票 / 成立要件 / 有権者 / 投票行動 / 投票率 / 戦略的棄権 / 新政治経済学 / ゲーム理論 |
Research Abstract |
市町村合併の是非を問う住民投票の多くで、その成立要件として、投票率が予め定められた水準(多くの場合50%)を超えなければならないというルールが設けられた。本研究の目的は、この成立要件が有権者の投票行動に与える影響を理論と実験により明らかにすることである。 今年度は理論研究を行い、その成果を論文Yoichi Hizen and Masafumi Shinmyo,"Imposing a Lower Bound on Voter Turnout,"HOPS Discussion Paper Series No.6にまとめた。論文では、住民投票を(1)各有権者が賛成派と反対派のいずれかにランダムに振り分けられる、(2)各有権者は、他の有権者たちがどちらの派に属するかを知らないまま(ただし、各派に属する確率は知っている)、賛成に投票するか、反対に投票するか、棄権するかを選ぶ、(3)投票率が予め定められた水準を上回ったら住民投票は成立し、より多くの票を得た選択肢が選ばれる、という不完備情報静学ゲームで表現したうえで、成立要件の水準に応じて有権者たちの投票行動(ベイジアン・ナッシュ均衡)がいかに影響されるかを導出した。その結果、成立要件が課されない場合には賛成派は賛成に、反対派は反対に投票し、投票率100%が達成されるという極端な状況を考えても、成立要件が課されると複数均衡が発生し、その多くで、負けそうな派の有権者たちが住民投票の不成立を狙って戦略的に棄権することが示された。この結果は、これまで数値計算でしか証明されていなかったが、この論文では解析的に証明している。また、低投票率のため不成立となった住民投票の事例として、2005年1月に実施された石狩市の2村との合併の是非を問う住民投票に触れ、理論的帰結のインプリケーションを吟味している。
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Research Products
(1 results)