2007 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル経済下における政策課税の理論的基礎と制度設計に関する研究
Project/Area Number |
18730214
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
諸富 徹 Kyoto University, 大学院・公共政策連携研究部, 准教授 (80303064)
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Keywords | 政策課税 / 留保利潤税 / 環境税 |
Research Abstract |
本年度は、次の2点において研究の進展が図られた。第1点目は、政策課税概念の明確化、第2点目は、政策課税の実例としての環境税の分析である。 第1点目については、アメリカでかつて導入された留保利潤税を素材に、アメリカにおける政策課税の歴史と理論史をまとめ、その過程で政策課税概念がどのようにして彫琢されていったかを検討した。留保利潤税は、ニューディール期にルーズヴェルト政権下で導入された政策課税で、法人利潤の留保に対して累進課税がなされた。そこで、政策課税理念の具現化ともいえる留保利潤税の分析を通じて、それが実際に狙った政策効果を発揮しえたのかどうかを分析した。 この結果分かったことは、留保利潤税はたしかに企業の配当性向を引き上げることに寄与したという意味で効果を挙げたことである。しかしそのインパクトは、中小企業に対してより大きな影響を与え、彼ら事業展開に対して負の影響をもたらした可能性があるということも明らかになった。これは、本来留保利潤税が狙った効果ではないが、政策課税の実施には往々にしてこのような副作用がともなうことがある。 留保利潤税の分析から得られる教訓としては、政策課税はその理論的根拠がしっかりしたものであって、政策効果を発揮しうる場合であっても、それが経済活動に対して何らかの負の影響を与えてしまう可能性があるという点である。したがって、政策課税を成功に導くためには、このような副作用を抑えるための手法を何らかの形で別途用意しておく必要がある。そして、留保利潤税の経験は、今後グローバル化や温暖化問題など、地球規模で企業活動の拡大が大きな影響をもたらすにつれて、新たな次元で貴重な教訓を我々に与えてくれると考える。 また、環境税については、イギリスの気候変動税が理論の想定どおり、二重配当をもたらしたのかという点を、ケンブリッジ・エコノミストによる研究に基づきながら分析した。
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Research Products
(4 results)