2007 Fiscal Year Annual Research Report
官僚と政治家の相互関係による公共政策決定過程の理論・実証分析
Project/Area Number |
18730218
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
金崎 雅之 Kyushu Sangyo University, 経済学部, 講師 (50403944)
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Keywords | 公共財 / 特定利益団体 / 政治献金 / 情報獲得 / 分離均衡 / 一括均衡 |
Research Abstract |
本年度は2008年2月に刊行された応用経済分析I産業・都市・公共政策(勁草書房刊、第9章『政治献金と政府および市民の情報優位性』p189-209)を執筆した。本章では公共事業に対する住民の選好に関する情報に関して不確実性があり、かつ政治献金をおこなって公共事業を肥大化させることで利益を得ようとする特定利益団体に対して政府と住民がこの選考に関する情報について優位にある場合の公共投資決定水準が政治的にどの程度歪められるか、そしてその場合、住民の選好に関する情報を獲得しようとする政府のインセンティブがどのようになるか検討を行った。その結果、本章の重要な帰結の一つである、通常の契約理論では見られないような、非対称情報下で完全情報下の均衡が実現する場合があることが確認された。さらには政府の政治献金に対する評価が高まるにつれて、公共投資決定に関する政治的な均衡は、非対称情報下での分離均衡、そして-括均衡へとシフトすることが確認された。また、政府の情報獲得のインセンティブは、政府が政治献金に対して付与する評価が高まるほど小さくなっていくことが確認されている。これは、献金への執着が強い政府ほど、住民の情報を獲得しようとしない、言い換えると政策決定に住民の意向を反映しない政府であることが確かめられた。 本章での結果は、従来の契約理論で見られなかった新しい知見を得られた点と、情報の経済学に新しい政治経済学の分析(政治献金の経済分析)を取り入れた応用ミクロ経済分析において、一定の貢献があるものと思われる。
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Research Products
(1 results)