Research Abstract |
3年計画の2年目として,本年は1年目に行った研究を発展させ,主に以下の2つの研究に従事した。 論文"Policy and Product Differentiations Encourage the International Transfer of Environmental Technologies"では,「地球環境」という国際公共財を共有する国家間の戦略的な技術移転のインセンティブを分析した。具体的には,従来の公共財供給の分析では見落とされていた「国際市場(競争)」を組み込み,「どのような条件の下で,国家間の環境技術(公共財供給技術)の自発的な移転が促されるか」を分析した。分析結果として,(環境)政策の水準と国際競争市場に置ける各国家企業の財の差別化の程度にかんする非対称性が大きな場合でなければ,自発的な国家間の環境技術移転は行われないことが明らかになった。これは地球温暖化問題に対する京都議定書における,CDM(クリーン開発メカニズム)や,ODAなどの援助の問題に対し,政策的含意を有すると考えられる。 また,もう一つの研究("Strategic Voting for Noncooperative Environmental Poliies in Open Economies")では,上記の研究の枠組みに,さらに「各国内での民主的な政治プロセス」を導入し,「公共財(環境)を通じた戦略的相互依存関係を考慮したとき,各国の民主的な政治プロセスによって,どのような(環境)政策策定者(政治家)が選ばれるのか?」を考察した。結果として,各国が(環境)規制的政策ツールを用いるときには,民主的な政治プロセスによって,各国からより環境を配慮しない政治家が選出され,環境(国際公共財の過少供給)問題はさらに悪化するおそれがあるが,(環境)税ツールを用いるときには,民主的な政治プロセスによって,各国からより環境を配慮した政治家が選出されうることが明らかになった。また,市場の構造(数量競争もしくは価格競争)などの違いも,これらに影響を及ぼすことがあることが明らかになった。この結果は国際社会における環境政策の手段にかんする国際的合意にかんして,強い政策的含意を有していると考えられる。 これら2点の研究は,ワーキングペーパーとして公開しており,現在,国際学術雑誌(査読有)に投稿するべく,改訂中である。
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