Research Abstract |
本研究では, 1. 授業における活発な相互作用を促進し, 級友相互に学び合える学級集団のあり方について検討するとともに, 2. そのような学級集団を形成するには, 教師は年間を通じてどのような指導を行う必要があるかについて検討した。 1. については, 小学生を対象にした質問紙調査を用いて検討した。その結果, 個別的・課題志向的な学習意欲と相互作用を伴う協同的な学習意欲では影響を及ぼす要因が異なっており, 協同的な学習意欲には, 目標やライバルとなる児童の存在だけでなく, 親密な友人の存在やクラス受容, クラスの凝集性といった親和的な友人関係が大きな影響を及ぼしていること, また授業中の活発な相互作用は, 親和的な友人関係だけでなく, 他者尊重や規律正しさといった学級規範からも大きな影響を受けており, それが児童の聴く姿勢を高め, 個々の児童の発言を促進している可能性が示唆された。 2. の教師の指導のあり方とその授業実践の効果については, 担任教師に対する面接調査や授業観察, 児童に対する質問紙調査を用いて多面的かつ縦断的に検討した。その結果, 児童の学習意欲を高め活発な相互作用を生み出す熟達教師は, 学習する姿勢や態度, 他者尊重といった規範の形成に1学期の多くの時間を費やしていること, 学習指導では授業における最終到達点(授業目標)と授業で用いる既習事項を明確化するとともに, 発言では事実と意見の区別を意識させ, それらを話し合いでの指導や板書, ノート指導を通じて定着, 共有させることに重点を置いていることが示された。またこのような学級の児童は, 1学期の時点ですでに意識面で他の学級と違いがあり, 2学期3学期では授業中の相互作用でも違いが示された。
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