Research Abstract |
私語の発生過程について,質問紙による測定や観察,シミュレーションによって検討した。大学における私語は,多人数で行われる授業において多く発生すると思われるため,なるべく多くの履修者がいる授業を主な研究対象とした。このため,1台の測定機器のみでは教室全体をカバーすることが困難と考えられることから,最大で12地点における音量を同時に測定することが可能な装置を作成し,私語の計測を試みた。 また,私語の発生過程に関する質問紙調査も引き続き実施し,私語に対する態度や大学への適応と私語の頻度との関連について,さらなる考察を行った。 シミュレーションについては,個々人が持つ私語に対する態度の相違(個人差)や大学に対する適応等の要因も取り入れ,検討を加えた。具体的には,質問紙調査によって得られたデータの一部をコンピュータに入力してシミュレーションを行うなど,現実場面から収集したデータも使用した分析を行った。 その結果,1.局所的な相互作用と,2.「ある時は周囲の状況に従い,またある時は自己の態度に従う」という非0・1的な行動パターンの存在が,私語が教室に広がる重要な要因となっている可能性が示唆された。 さらに,これらの研究結果に基づいて,最終年度で行う「私語に関する授業」に用いる教材の開発も進めた。具体的には,一般の学生が理解することが可能な,調査結果の提示方法の検討や,わかりやすい形で私語の発生過程を可視化するサブルーティンのプログラミングなどを行った。また,研究の成果は,論文や学会発表だけでなく,シンポジウムやFD関連の研修会においても公表した。
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