Research Abstract |
本研究は, 小中学校の教員志望者が, 問題場面(教師あるいは児童生徒がフラストレーションを抱える場面)でのコミュニケーションのレパートリーを学ぶための教育プログラムの開発を目的としたもので, 平成18年度から20年度までの3年計画によるものである。平成18, 19年度までは, 当該プログラムで活用する教材作成に必要な基礎データを, 小・中学校を対象とした調査を通じて収集した。そして平成20年度に入り, そのデータをもとに, 小・中学校の多様な問題場面に対する教師の言葉かけの特徴をまとめた教材を作成した。その後, この教材を活用した, 問題場面での教師のコミュニケーションのレパートリーを学ぶための教育プログラムを, 教職科目「教育心理学」のなかで実験的に行った。当該の教育プログラムは, 、6コマ分の授業の中で, 次の手続きに沿ってすすめた。まず初回の授業で, 受講学生は, 10種類の問題場面が描かれたワークシートを配布され, 各場面で教師が実践しうる言葉かけ, ならびに指導上の留意点について, 思い浮かぶままに回答した。2回目から6回目の授業では, 受講者は4〜5人1組のグループとなり, 1場面につき30分程度を費やし, 考えられる言葉かけや指導の留意点についての意見交換, ならびにグループ間の意見交換を行い, その後教員から小中学生から得たデータを含む教材の配布ならびに解説を受けた。その上で, 各受講学生は, 再度, ワークシートに問題場面で実践しうる言葉かけならびに指導上の留意点について再考することを行った。一連の教育プログラムの実践後に, 受講学生のワークシートを回収して内容を検討したところ, 当該プログラムが, 各受講生のコミュニケーションのレパートリーの広がりの支援につながることを確認した。また, 指導上の留意点に関する幅広い観点を, 受講生が獲得したことを確認した。
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