2006 Fiscal Year Annual Research Report
微分作用素のスペクトル分布に対する精度保証とその応用
Project/Area Number |
18740055
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長藤 かおり 九州大学, 大学院数理学研究院, 助教授 (40326426)
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Keywords | シュレデンガー作用素 / 本的スペクトル / スペクトルギャップ / 数値的検証法 |
Research Abstract |
平成18年度は、周期的ポテンシャルに摂動が加わった形の1次元シュレディンガー作用素の固有値の非存在範囲の精度保証についての研究を行った。これはバンド構造の本質的スペクトルを持つ作用素であり、スペクトルギャップにおいて離散スペクトルが存在するかしないかを数学的に厳密に保証することは大変重要な問題である。固有値の非存在を保証する方法として、調べたい区間を十分狭い幅として固定し、固有ベクトルのみについての線形方程式の解の一意性を示す手法を用いた。この線形方程式を不動点定式化する際に、摂動項なしのポテンシャルを持つ線形常微分方程式の基本解を用いる手法を提案した。さらに、解の候補者集合の設定についても、非有界領域を有界領域とその残りに分け、それぞれの無限次元部分・有限次元部分を効率的に評価する功名な手法も新たに導くことができた。これらの定式化のためには、まず二種類の異なる境界条件を付した二つの線形問題に対する基本解の数値的検証をそれぞれ行う必要があるが、これについては高精度な検証結果が既に得られている。これらの基本解を用いた固有値の非存在検証の具体的な数値計算については来年度に行う予定である。 上記の研究内容について、2006年9月にKarlsruhe大学(ドイツ)のPlum氏を訪問し研究打ち合わせを行った。Plum氏との研究討論により、定式化についての改良を行うことができ、本研究の遂行にあたって有益な情報も多く得ることができた。また、同じく9月にドイツのDuisburgで開催された国際シンポジウム「SCAN2006(International Symposium on Validated Numerics 2006)」で招待講演を行い、固有値問題全般に関する解説を行うとともに、上記の研究成果についての最新報告も行った。さらに、Cardiff大学(イギリス)のBrown氏やSchmidt氏など、本研究に関連する研究者とのdiscussionも随時行い、本研究の来年度以降の更なる進展についての目処をたてることができた。
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Research Products
(3 results)