2006 Fiscal Year Annual Research Report
カムランド検出器における二重ベータ崩壊観測の基礎研究
Project/Area Number |
18740125
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 斉 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60400230)
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Keywords | ニュートリノ / 低バックグラウンド / シンチレータ |
Research Abstract |
近年のニュートリノ振動実験の観測結果(スーパーカミオカンデ、カムランド、SNOなど)から、ニュートリノの質量の存在が示され、現在はニュートリノの質量の絶対値測定が重要なテーマになっている。複数あるニュートリノ質量測定の中で、ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊の観測は、質量の絶対値とその起源を探ることができる唯一の方法として有力な手段である。 本研究計画において申請者が取り組むのは、大規模ニュートリノ検出器カムランドに二重ベータ崩壊核を含む無機結晶シンチレータを組み合わせてニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊の観測を行うための基礎研究である。 二重ベータ崩壊の観測実験においては超低バックグラウンド環境の実現が、実験の成否を決めるため、検出器開発の段階において予測されるバックグラウンドの評価がきわめて重要である。本研究ではカムランド検出器に不活性フッ化カルシウムシンチレーション検出器(以下CaF_2検出器)を沈めた複合型システムの有効性を提案し、予測される検出器性能(エネルギーおよび位置分解能、バックグラウンド)の評価、およびCaF_2検出器を保持するための機構の考察を行い、ニュートリノ質量の絶対値測定に展望を開くことを目的としている。 本年度は、検出器系の外層である液体シンチレータの透過率改善に関しての研究を行った。液体シンチレータは自らが発光し外部起因のバックグラウンドの削減をになうことと同時に、真事象であるフッ化カルシウムシンチレータ中での発光を伝播する役割を持っている。液体シンチレータの透過率はこの点で改善することに大きな意義があり、モレキュラーシープと呼ばれる吸着剤で処理することにより、低波長領域(フッ化カルシウム結晶の発光領域)で透過率が20〜30%改善することがわかった。
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