2008 Fiscal Year Annual Research Report
軽い中性子過剰核の分子的構造と核反応機構の統一的研究
Project/Area Number |
18740129
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 誠 The Institute of Physical and Chemical Research, 中務原子核理論研究室, 基礎科学特別研究員 (30396600)
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Keywords | 中性子過剰核 / クラスター構造 / 分子共鳴状態 / 移行反応 / 超変形状態 / 分子軌道構造 |
Research Abstract |
科研費交付期間(平成18、19年度)において、一般化中心クラスター模型の開発、拡張を行い、^<12>Be=α+α+4N系への適用を主に進めてきた。その結果、基底状態近傍では、分子軌道構造の発展に伴いN=8の魔法数の破れが発現し、更に非束縛エネルギー領域においては、分子軌道構造とは対照的な原子、イオン的配位といった、エキゾチックなクラスター状態が発現することが明らかになった。これらの非束縛状態は、非常に狭いエネルギー領域に共存しており、これは過剰中性子の分離エネルギーが非常に小さい性質に起因していることが判明した。この結果は^<12>Beについてのものであるが、中性子ドリップライン近傍の核では、中性子分離エネルギーは常に小さくなるため、ここで得られた非束縛状態の縮退性は、ドリップライン核の非束縛領域に普遍的に発現する可能性が極めて高い。 平成20度は、ここで得られた成果を国際会議、ワークショップで報告し、主に海外の研究グループと将来計画を議論するために予算を執行した。特に、昨年7月にフランスGANIL研究所において、低速^8Heによるα散乱実験が行われたため、この実験データが得られる直前から直後に渡り、成果報告と実験グループと直接に議論を行えたことは、国際的な研究進展の面において非常に意義が大きい。 一方、近年、クラスター構造の発達に伴った単極遷移の増大が議論されていたが、^<12>Beにおいて単極遷移の計算を行った。その結果、基底状態のα-α相対運動の発達に伴い非束縛領域に発現する、イオン状態(α+^8He)への単極遷移が顕著に増大することが明らかになり、中性子過剰系においても、単極遷移がクラスター構造の発達と密接に関連することを明らかにした。 更に本年度は、理論手法の拡張も進めた。これまでは角運動量射影を部分的に解析的に行ってきたが、この方法では重い系では計算が非常に複雑になるため、これを数値計算により機械的に行う手法を新たに開発した。現在、^<14,16>Be、酸素、ネオン同位体へ拡張すべく、理論の拡張を進めている。
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