2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740190
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小嶋 健児 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (60302759)
|
Keywords | 高温超伝導 / ジョセフソン結合 / 磁場光学効果 / テラヘルツ / 積層構造 / イットリウム系高温超伝導体 / 水銀系高温超伝導体 / 400cm-1モード |
Research Abstract |
本研究は、高温超伝導体の層状構造と外部磁場との組み合わせで現れる、磁場誘起型の光学活性モードの発現機構を明らかにし、また、その応用として、外部磁場によって周波数がチューナブルな、テラヘルツ発光素子の開発を目指している。本年度は、CuO2面の積層枚数が1枚から最大5枚までコントロールできる、水銀系高温超伝導体に関して、以下のことを明らかにした。水銀系高温超伝導体は、最高135Kと超伝導転移点が高く、イットリウム系より有利である。 (1)c軸の光学応答測定によって、ゼロ磁場下で現れる光学活性ジョセフソンプラズマモードのエネルギーが、イットリウム系高温超伝導体(YBCO)に比べはるかに高いこと。YBCOにおいて400cm^<-1>程度であった、このモードのエネルギーは、水銀系多層系高温超伝導体では、800cm-1程度と、実に2倍のエネルギースケールを持っており、このことが水銀系多層高温超伝導体の高い超伝導転移温度(Tc)に寄与している可能性を示唆している。 (2)ミュオンスピン緩和法を用いて、水銀系多層高温超伝導体の面内超伝導凝集量を測定し、この物質もこれまで主張されている、Tcと面内超伝導凝集の一般的な関係に沿っていることが分かった。c軸の超伝導応答は、CuO2面内に存在する超伝導キャリアの面間ジョセフソントンネル現象で起こっているが、その土台となる面内超伝導キャリアの性質は、これまで知られている高温超伝導体と本質的に同じと思われる。 (3)外部磁場に対するc軸光学応答は、光学活性ジョセフソンプラズマモードが超伝導由来であることを支持している。このモードの最適組成付近におけるCuO2積層枚数依存性は明らかにしたが、キャリア数を最適組成からコントロールすることは、水銀系特有の難しさがあり、試料条件の最適化は未だ途上である。
|