2006 Fiscal Year Annual Research Report
クロムスピネルにおける磁場誘起相転移および磁化プラトー状態の解明と探索
Project/Area Number |
18740194
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 浩明 東京大学, 物性研究所, 助手 (10373276)
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Keywords | 強相関電子系 / 磁性 / 低温物性 |
Research Abstract |
本研究の対象である磁気転移を示す物質は,カドミウムおよび水銀のクロムスピネルのみでしか知られておらず,二つの物質のみの比較では,本現象の本質を探るには不十分である.そこで,同様の現象を示す新しい物質の探索と並行して,既知の二つの物質の圧力下での挙動の観測を行うことを目的に研究を行った. まず,圧力下での物性測定を行うために,磁化率を圧力約2GPaまで測定できるシステムを構築することに成功した.これを用いていくつかのクロムスピネルの圧力下での磁化率の温度依存性を測定した結果,圧力の印加によって最新接相互作用はより反強磁性的になることが明らかになった.さらに,水銀スピネルの磁気転移の圧力依存性を測定するために,交流磁化率を圧力約3GPa,磁場14Tまで測定を行った.その結果,転移磁場は圧力とともに増加し,その増加の割合は,最近接の反強磁性相互作用の増大の割合とほぼ一致した.これによって,最近接の反強磁性相互作用が,磁気転移を支配していること明確に示された. 新しい系の探索としては,亜鉛のクロムスピネルにおいて,磁気転移を示すことを発見した.さらに、磁気転移の仕方が他の二つの系と異なっていることを見出した.スピン格子相互作用の大きさが系によって異なっており,それによって磁気転移の振る舞いが違ってくることが理論的に予測されている.今回観測した現象は,スピン格子相互作用の重要性を示唆していると考えられる.
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