2006 Fiscal Year Annual Research Report
新規に合成されたPrおよびSm化合物の軟X線分光による電子状態の解明
Project/Area Number |
18740201
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
山崎 篤志 甲南大学, 理工学部, 講師 (50397775)
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Keywords | 光物性 / 強相関 / 軟X線 / 光電子分光 |
Research Abstract |
本年度は,大型放射光施設SPring-8において純良単結晶の育成に成功したSm充填スクッテルダイトおよびPr充填スクッテルダイトの硬X線光電子分光を実施した.このなかで,軟X線光吸収分光からバルクにおいてサマリウムが価数揺動状態であることが確認されていたSmOs_4Sb_<12>において,硬X線を用いた高精度でのSm3d内殻光電子分光およびそのスペクトルの温度依存性を測定し,この価数揺動状態を再度検証すると共に,T=20-100Kの低温領域においてSm2価成分が3価に対して増大する重い電子的振る舞いを観測することに成功した.また,実験において得られたSm3d内殻光電子分光スペクトルおよび軟X線光吸収スペクトルに対して,配置問相互作用を取り入れたクラスターモデル計算を実施し,両スペクトルの形状を理論計算により再現することが可能であることを示すとともに,原因が不明であった価数揺動状態と重い電子状態の共存のメカニズムを明らかにした.その詳細としては,SmOs_4Sb_<12>の中に存在する12個のアンチモン原子からなる1nm程度の大きさのカゴとそこに内包されている希土類イオンの種(サマリウム)がこの共存を実現する上で重要であり,イオン半径が大きくなることを許すカゴの十分な大きさ(価数揺動状態の必要条件)とアンチモンの5p電子軌道とサマリウムの4f電子軌道の混成が小さくなるカゴの大きさ(重い電子状態の必要条件)の2つの条件をアンチモン原子のカゴが満たしていることによって,この共存が実現していることを明らかにした. 上記のような研究結果に対して,電子構造と分光の国際会議(ICESS10)と磁性国際会議(ICM2006)において発表すると共に,論文5報(国際会議報2報を含む)にまとめた.
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Research Products
(6 results)