2006 Fiscal Year Annual Research Report
EAスピングラスにおける温度カオス効果、及びそのダイナミクスへの影響
Project/Area Number |
18740226
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 志剛 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80400282)
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Keywords | スピングラス / 温度カオス / 非平衡ダイナミクス / ランダム系 / フラストレーション系 / モンテカルロ法 / 実空間繰り込み群 / 統計力学 |
Research Abstract |
1.イジングスピングラスの平均場模型は磁場中スピングラス相が存在することが知られているが、EAイジングスピングラス(低次元・短距離相互作用型のイジングスピングラス)において磁場中スピングラスが存在するかどうかは今なおはっきりとした結論が得られていない。本研究では、ドメイン壁実空間繰り込み群法とモンテカルロ法を組み合わせた手法によって有効カップリング・有効磁場のデータを得て、それをスケーリング解析することにより、この間題に対する検証を行った。その結果、例えその大きさが無限小であっても磁場はスピングラス秩序を破壊すること、つまり磁場中スピングラス相は存在しないことを強く示唆する結果を得た。またスビングラスは、ゼロ磁場のスピンパターンと磁場中のスピンパターンはある特性長1(H)より長いスケールで完全に無相関になると考えられているが(磁場カオス)、この特性長1(H)の定量的見積もりに成功した。この磁場カオスは、磁場中スピングラスの非平衡ダイナミクスで観測される奇妙な現象と大いに関連があると考えられており、本研究は両者の関連を研究する上で重要な役割を果たすものと考えられる。[研究業績1] 2.XYスピンを持つEAスピングラスにおいて、個々のサンプルにおける有効カップリングの温度依存性を調べた。そして、有効カップリングがある温度では強磁性的であるのに別の温度では反強磁性的になるといった、温度カオスの存在を示唆する結果を得た。ただし、有効カップリングを精度良く測れるサイズが小さいため、有限サイズスケーリングによって温度カオスの存在を定量的に示す所まではいたっていないのが現状である。有効カップリングの測定方法に関しては、通常のモンテカルロ法を用いた方法の他にJarzynski等式を用いた手法も開発するなど、本年度の研究でも幾つかの工夫を試みたのだが、今後更なる工夫が必要である。
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