2007 Fiscal Year Annual Research Report
EAスピングラスにおける温度カオス効果、及びそのダイナミクスへの影響
Project/Area Number |
18740226
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 志剛 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 助教 (80400282)
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Keywords | 長距離相互作用系 / モンテカルロ法 / ランダムスピン系 / 温度カオス効果 / エイジング現象 / メモリー効果 / 若返り / Sinaiモデル |
Research Abstract |
1.RKKYスピングラスやランダム磁気異方性を持つ磁気双極子系など、長距離相互作用を持つランダムスピン系が、短距離相互作用しかもたないEAスピングラスと同様に温度カオスの性質を持つかどうかは興味深い問題であるが、この問題に取り組むために必要不可欠な、長距離相互作用系のための効率的モンテカルロ法の開発を行なった。一般に粒子数Nの長距離相互作用系では、1モンテカルロステップあたりN^2オーダーの計算時間が必要であるが、本手法では近似無しで計算時間をNlogNオーダーに削減することに成功している。現在のところ本手法は粒子が格子上に規則正しく配列している場合のみ適用可能であるが、粒子が不規則に配列している場合にも適用可能な手法を現在開発中であり、その成果は次年度に発表する予定である。 2.Sinaiモデルと呼ばれる、ポテンシャルが複雑な多谷構造をしている一次元モデルにおいて、温度変化を伴う非平衡ダイナミクスの研究を行なった。過去にも同様の研究が行なわれているが、モンテカルロ法が用いられたため短いタイムスケールのみが調べられていた。それに対して本研究では、マスター方程式に現れる遷移行列を数値対角化する事により同モデルのダイナミクスを厳密に解いており、任意のタイムスケールを調べることが可能である。また、モデルに温度カオス効果を導入し、それがダイナミクスに及ぼす影響を調べた。本研究で得られた結果は以下の通りである。 (1)タイムスケールが増えるにつれ、温度による緩和スピードの差がより顕著になる。 (2)その結果、長いタイムスケールのダイナミクスでは、例え温度カオス効果があってもメモリー効果(温度を一時的に下げても、系が高温での履歴を覚えている現象)が観測される。 (3)逆に温度を上げた場合、温度カオス効果が無い場合は緩和の促進が、ある場合は緩和の再初期化が観測される。
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