2006 Fiscal Year Annual Research Report
格子と結合した量子スピン系における乱れとフラストレーションの効果
Project/Area Number |
18740239
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
安田 千寿 青山学院大学, 理工学研究科, 研究員 (20398564)
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Keywords | 計算物理 / 磁性 / 物性理論 / 統計力学 / 物性基礎論 |
Research Abstract |
スピンパイエルス物質CuGe03は低温で非磁性な状態にある。これは、磁性を担うCu原子のスピンが格子歪みを伴ってダイマー一重項対を形成するためであり、スピンパイエルス転移と呼ばれている。さらに、この物質のGeをSiで置換すると、非磁性な状態から反強磁性長距離秩序のある状態へ相転移する。所謂、「不純物誘起長距離秩序」である。GeをSiで置換することは、Cuスピン間の相互作用を弱めることに相当している。本プロジェクトでは、この現象のメカニズムを明らかにし、機能的な物質を設計するための指針を与えるため、ボンド交替鎖からなる正方格子反強磁性ハイゼンベルク模型のボンド希釈効果を量子モンテカルロシミュレーションによる計算物理学的手法により調べた。ボンド希釈すると、ダイマーが壊れ、抜いたボンドの両端に有効スピンと呼ばれる磁気モーメントが誘起する。これらが一重項対を媒介にして相互作用することにより、長距離秩序が誘起されるのである。本研究では、それらの有効スピン間には二種類の有効相互作用が競合して存在し、それらの相互作用の強さが同等になるまで反強磁性長距離秩序が誘起されないことを明らかにした。有効相互作用の一つは、異なる希釈ボンドの両端に誘起した有効スピン間の相互作用であり、もう一つは同じ希釈ボンドの両端の有効スピン間の相互作用である。後者が一重項対の再形成をすることが重要である。従来、この問題は平均場近似などの近似的手法で扱われてきたため、このような理解には至っていなかった。この結果は、数値的手法を用いて二次元性や乱雑さを正面から取り入れたからこそ得られた結果である。本研究では、格子の自由度をボンド交替として導入したが、今後、格子自由度を直接考慮に入れたシミュレーションを実行する予定である。
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Research Products
(2 results)