2007 Fiscal Year Annual Research Report
飛行時間差法を用いた低エネルギー電子衝撃による分子の非弾性散乱閾値の精密分光
Project/Area Number |
18740248
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
星野 正光 Sophia University, 理工学部, 助教 (40392112)
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Keywords | 原子・分子物理 / 電子分光 / 低エネルギー電子 / 闘分光 / 飛行時間法 |
Research Abstract |
本研究では、低エネルギー電子散乱実験で広く普及している従来の静電型エネルギー選別器を用いた手法とは異なる手法で非弾性散乱閾値の精密分光実験を行う目的で装置開発を行ってきた。これは、従来行われてきたクロスビーム法と飛行時間差法を組み合わせた手法(飛行時間差型分光器と呼ぶ)である。低エネルギー電子ビームのパスル化と散乱電子の検出時間までの飛行時間差の関数として散乱電子を検出することにより、電子の工ネルギー損失スペクトルに対応した飛行時間差スペクトルを測定する。 今年度は、昨年度製作した装置で測定準備を行ってきた。まず、動作テストして最も単純な2原子分子であるN_2を標的として用い、弾性散乱と電子励起を区別した飛行時間スペクトルを入射エネルギー約30eV、散乱角度90度で測定した。パルス間隔200 nsec、パルス幅5 nsecの条件で測定することにより弾性散乱と電子励起による非弾性散乱した散乱電子の検出に成功し、動作を確認することが出来た。本実験装置の開発状況は、平成19年度イギリスのレディングで開催された電子・分子・スウォームの国際会議において発表された。さらに、今後飛行時間差による閾値周辺の極めて低エネルギー領域の散乱電子の微分断面積と比較・規格化するために、本申請と同時並行で電子励起過程の測定を従来から用いてきた静電半球型エネルギー選別器により行ってきた(研究発表1-4)。この実験結果では、閾値より比較的高いエネルギー領域における電子励起過程の断面積を測定していることから本申請の飛行時間差法と相補的な関係があり、広範囲の電子励起過程の断面積測定に必要不可欠である。今回、本申請において実験装置が完成したことから、今後入射エネルギーを閾値近傍まで下げた低エネルギー領域で断面積測定を行うことが可能となった。今後、電子励起過程について様々な分子に対して測定する予定である。なお、本装置の開発状況は投稿論文として準備中である。
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Research Products
(5 results)