2006 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀および地球温暖化時のモンスーン熱水循環変動の解明
Project/Area Number |
18740290
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
植田 宏昭 筑波大学, 大学院生命環境科学研究科, 講師 (70344869)
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Keywords | 地球温暖化 / IPCC / マルチモデル / モンスーン / エルニーニョ / インド洋 / ENSO / 季節サイクル |
Research Abstract |
平成18年度では、モンスーン地域での気候変動について、地球温暖化を含む長期変動スケールの研究を行った。IPCCによるマルチモデルアンサンブルデータ、客観解析データ、衛星リモートセンシングデータ、大気海洋結合モデルなどを組み合わせて包括的な研究を実施した。 個別の成果は下記の通りである: 1)地球温暖化に伴い、将来気候である2001〜2100年の海面水温の変化が現在気候に比べてどのように変調するのか調査した。将来気候では現在気候と比較するとNINO3での昇温が2〜4度ほどみられた。このエル・ニーニョ型の昇温という結果は、Mathew et al.,(2005)や桑子(2006)らの結果と一致している。次に地球温暖化によりENSOの振幅は変化するか、大気-海洋の感度を調査した。地球温暖化が進むにつれて3つのモデルについて海洋の感度が上昇した。つまり海洋は風応力の影響を受けやすくなるためENSOの振幅は増強されやすくなる。しかし、残りの3つのモデルでは感度が変化しなかった。また、海水温の鉛直分布を調査したところ大気-海洋の感度と同じようにエル・ニーニョ型の昇温と風応力が海洋に影響を受ける結果を示した。温度躍層厚の変化については東部太平洋での沈降、西部太平洋での隆起により海面水温に影響を与えにくくなることからENSOの振幅は弱化されるという結果になった。混合層は将来浅くなることからENSOの振幅が増強されることがわかった。混合層が浅くなり、温度躍層厚の東西傾度が大きくなるとENSOの振幅は増強される。つまり海洋の感度が上昇するとENSOの振幅は強化され、感度が変化しない場合はENSOの振幅は変化しないといえる。大気ー海洋の変化で海洋の感度が上がるものと、感度が変化しないものと2パターンにわかれることから、2つに分類わけを行い、それぞれENSOの変化をみる必要がある。 2)インド洋におけるSST変動の季節位相固定性は、ENSOに伴ったRWCとモンスンー循環の季節的な結合過程として生じると考えられる。ウォーカー循環の逆転に伴うインド洋上東風偏差は夏のモンスーンの循環の変調を介して引き続く秋にインド洋ダイポールを発生させる。一方、秋に東風偏差が現れると引き続く冬に全域昇温を生じる。逆に、エルニーニョの影響で発生したインド洋の全域賞は西太平洋の東風偏差を強め、ラニーニャへの遷移プロセスを強化していた。このことからも、インド洋の季節性が、冬に最盛期となるENSOの季節性を強める傾向があると言える。線形大気海洋結合モデルを用いて、このインド洋全域昇温の昇温する季節の重要性を確認したところ、インド洋上の冬の昇温が最も振動子として効果的に作用することが判明した。このことはENSOの遷移/持続の長期予報を行う上で、インド洋SSTのシミューレーションとその精度そのものが非常に重要であることが分かった。
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Research Products
(7 results)