2007 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀および地球温暖化時のモンスーン熱水循環変動の解明
Project/Area Number |
18740290
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
植田 宏昭 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (70344869)
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Keywords | 地球温暖化 / IPCC / マルチモデル / モンスーン / エルニーニョ / インド洋 / ENSO / 季節サイクル |
Research Abstract |
平成19年度では、モンスーン地域での気候変動について、地球温暖化を含む長期変動スケールの研究を行った。IPCCによるマルチモデルアンサンブルデータ、客観解析データ、衛星リモートセンシングデータ、大気海洋結合モデルなどを組み合わせて包括的な研究を実施した。 個別の成果は下記の通りである: 1)地球温暖化に伴う夏季アジアモンスーン域における水循環の変動について、PCMDIが提供する18の全球モデルによる温暖化数値実験の結果を用いて調べた。降水および水蒸気フラックスはモデルによらず増加するが、蒸発量の変動はモデル間のばらつきが大きく、有意な変化は見られない。降水効率(Schar et al.,1999)はモデル問を通して一貫した減少傾向を示した。夏季のアジアの降水増加をもたらす熱力学的要因は、蒸発による1ocaloriginよりも移流によるadvective originの水蒸気供給強化によるところが大きいことがわかった。 2)熱帯太平洋上で発生するエルニーニョ・南方振動(El Nifio and Southern Oscillation; ENSO)は、大気の橋を介して熱帯域の降水変動へ大きく影響を及ぼす。観測結果では正位相(エルニーニョ)から負位相(ラニーニャ)への遷移は急速に進むのに対し、その逆の遷移は多くのイベントで停滞する傾向があることが知られている。逆位相でかつ同様の振幅・空間分布をした海面水温偏差を大気大循環モデルに与えて診断を行ったところ、海面水温に対する大気場の非線形的な応答に伴って、対流・表層風偏差の空間分布は冬に大きく異なることがわかった。これらのことより、強いエルニーニョの年の次にはラニーニャが来るが、強いラニーニャの次の年には再度ラニーニャが来るというメカニズムが大気海洋結合システムに元々内在しているメカニズムであるということが明らかになった。
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Research Products
(5 results)