2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740342
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
深澤 裕 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (30370464)
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Keywords | 中性子 / 水 / 惑星 / 強誘電体 |
Research Abstract |
この研究で、宇宙の氷を模擬した試料の中性子回折測定に必要な冷凍機類を開発することが出来た。国内の中性子源施設で、初めて本格的な宇宙氷の研究を実施することが可能になった。開発した冷凍機を利用した中性子回折の実験より、天王星、海王星、冥王星等と同じ温度条件下(約-200℃)で、氷結晶中の水分子(H_2O)の水素(H)が自発的に揃う様子を初めて観測した。水分子の水素は正の電荷を帯びているので、これが揃うと氷自体が正負に分極して強誘電体になる。従って、本実験は太陽系に強誘電体の氷が存在することを示唆している。 これまで、数千万年程度の短い時間で惑星が誕生することは大きな謎となっていた。今回提唱した強誘電体の氷の存在はこの謎を解く新しい鍵になる。宇宙に塵として存在する強誘電体の氷は重力に加えて電気的な力を持つ。電気的な力は重力よりも遥かに強いので塵に強い力が作用する。この結果、塵から惑星が短い時間で形成されたのかもしれないと考えている。 また、宇宙の至る所に氷が存在することは判明していたものの、それが強誘電体である可能性を検討して、天文学上の議論に載ることはなかった。今回、水素の観測に最適な中性子を用いて可能になった実験により、惑星形成や生命起源の謎を解き明かす鍵である宇宙の氷、その氷が強誘電体であるという概念を、世界で初めて論文誌上で発表した。 さらに、中性子を使って強誘電体の氷特有の振動が、波長13μm及び17μmにあることも明らかにした。今後、冥王星等の天体からの赤外線をより詳しく観測することで、本提唱の実証が可能になると考えている。現在、冥王星を念頭にした更なる氷の研究を続けている。
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Research Products
(3 results)