Research Abstract |
本研究においては,磁化容易面が交互に90°ずつ振れ配向することにより形成された磁化容易軸を有する新規Fe(II)-Fe(III)混合原子価単一次元鎖磁石において,圧力や結晶溶媒の吸脱着などの外的容易による磁気挙動の制御を目的とする,本年度は溶媒の吸脱着による磁性の制御を目指し,類似の磁気構造を有する誘導体の合成と構造の解明,及び種々の条件下における磁気挙動の変化の解明を行った.具体的には,本単一次元鎖磁石系を構成する有機配位子Hbpcaにおいてアルキル基やクロロ基などの側鎖の導入を試み,結晶中における一次元鎖配列の制御を試みた.その結果,置換基をメチル,t-ブチル,フェニル基へと変化させることにより,磁気挙動の溶媒吸脱着依存性に違いが生じた.メチル基を導入したものにおいては,結晶溶媒が減圧乾燥下においても保持されるため,磁気挙動は常に一定であった.一方,t-ブチル基を導入したものにおいては,溶媒の格納される細孔が大きくなり,溶媒の吸脱着に伴う構造変化,磁性変化は可逆性が乏しいものとなった.また,フェニル基を導入したものにおいては,鎖間におけるフェニル基同士のπ-πスタックが生じており,溶媒の吸脱着により構造的には結晶相とアモルファス相を,磁性的にはフェリ磁性的な相と反強磁性相を可逆的に行き来することを見出した.以上により,本系においては結晶溶媒の吸脱着による構造変化・磁性変化を,有機配位子Hbpcaへの置換基導入により制御することに成功した.
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