2006 Fiscal Year Annual Research Report
オキソースルフィドーモリブデン錯体の合成と水を反応剤とする水酸化反応の開発
Project/Area Number |
18750052
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
杉本 秀樹 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (00315970)
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Keywords | タングステン / 金属錯体 / 硫黄 / 平衡反応 / オキソ錯体 / スルフィド錯体 / セレニド錯体 / 異性化反応 |
Research Abstract |
新規ペルスルフィド錯体、(Et_4N)_2[W^<6+>O(S_2)(dithiolate)_2]は温度変化のみで可逆的な硫黄の脱着反応を示した(溶媒:CH_3CN)。興味深いことに、硫黄が解離して生成した種は、前駆体の(Et_4N)_2[W^<4+>O(dlthiolate)_2]ではなく、W(V)錯体の(Et_4N)[W^<5+>O(dithiolate)_2]であることが明らかとなり、本平衡反応にはペルスルフィド基とテトラスルフィド基の変換が含まれることがわかった。本研究結果は、あらゆる金属錯体の中で、温度変化のみで可逆的に硫黄が脱着する初めての報告例である。W(VI)ペルスルフィド錯体は濃い赤色を、W(V)錯体は濃い青色をそれぞれ呈するので、この可逆的な硫黄脱着は肉眼でも確認することができる。吸収スペクトル変化によって可逆性を検討したところ、少なくとも10回は元のスペクトルが完全に再生した。さらに、硫黄の脱着がおこる温度範囲を配位子のドナー性によって制御でき、最も電子供与の強い配位子の錯体は-60℃まで温度を下げないと硫黄化しないが、最も電子供与の小さな配位子の錯体では100℃まで温度を上げても硫黄は解離しなかった。 酸化還元異性化反応の制御 末端カルコゲニドを酸素からより原子半径の大きな硫黄に変えた(Et_4N)_<2->[W^<6+>S(S_2)(dithiolate)_2]のスルフィド基及びペルスルフィド基の反応性について検討した。THF-CH_3CN(4:1)混合溶媒中で(Et_4N)_2[W^<6+>S(S_2)(dithiolate)_2]は、温度変化によるペルスルフィド硫黄の可逆的な脱着を示した。末端硫黄をセレンに変えて同様の硫黄化実験をおこなったところ、末端セレンが硫黄に置き換わった(Et_4N)_2[W^<6+>S(SeS)(dithiolate)_2]の生成が示唆された。これらの結果から、本系は二つの異性体(Et_4N)_2[W^<6+>S(S_2)(dithiolate)_2]および(Et_4N)_2[W^<4+>(S_3)(dithiolate)_2]の平衡および段階的な異性化反応を観測しうる系であり、これらの構造を溶媒によって制御できることが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)