2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18750133
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
堀内 佐智雄 独立行政法人産業技術総合研究所, 強相関電子技術研究センター, 研究員 (30371074)
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Keywords | 強誘電体 / 結晶構造 / 超分子化学 / 同位体効果 / 水素結合 / 誘電率 / プロトン移動 |
Research Abstract |
クロラニル酸のヨウ素誘導体であるヨーダニル酸(H2ia)を5,5'-ジメチル-2,2'-ビピリジン(55DMBP)と化合させることで、プロトン移動型の有機強誘電体を初めて実現できた。この結晶中では、酸から塩基へ一個のプロトンが移動した一価塩[H-55DMBP+][Hia-]として、酸一塩基分子間水素結合を介した一次元鎖構造を形成していることが分かった。誘電率の温度特性を測定した結果、一次元鎖方向に沿って大きな誘電率(室温で約300)と強誘電体特有のCurie-Weiss型挙動とともに、269Kに相転移を表すピーク異常を見いだした。併せて、相転移温度以下では明瞭な電場一分極履歴現象が実測できたことで、この結晶が強誘電体であることを立証した。室温と低温の単結晶構造解析を行うことで、相転移の前後では、プロトンの秩序-無秩序状態変化が生じていることを明らかにした。水素結合部分を重水素置換(93%D)すると、相転移温度は335Kへ上昇し(66Kの上昇)、室温で強誘電性が発現した。大きな誘電率と自発分極を示す方向は水素結合鎖に沿った一次元的なものである事実と、顕著な同位体効果を考え合わせると、強誘電性相転移には明らかに水素結合が重要な役割を果たしていると言える。履歴曲線から得られた自発分極値はH体とD体それぞれ1.2、1.7μCcm-2と大きく、しかも抗電場は2kVcm-1と強誘電性高分子に比べ約2桁もの小さい電場で分極反転できることを見出した。このように本年度の研究では、酸と塩基を組み合わせるという、超分子化学的な手法により、これまで報告したチタバリに類似した「変位型」強誘電体に加えて、KDP(KH2PO4)の有機版とも言うべき「プロトン移動型」という新たな有機強誘電体の実現に成功した。
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Research Products
(3 results)