2008 Fiscal Year Annual Research Report
色素増感太陽電池の光電変換特性とスピンダイナミクスの相関
Project/Area Number |
18750172
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
古川 貢 Institute for Molecular Science, 物質分子科学研究領域, 助教 (90342633)
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Keywords | 色素増感太陽電池 / スピンダイナミクス / 時間分解ESR / 光電変換特性 |
Research Abstract |
昨年度までに, Eosin-Yを色素分子とし, 色素分子の時間分解ESRスペクトルを測定し色素単体におけるスピンダイナミクスを観測することに成功した. 本年度の目的は, Eosin-Yを吸着させたTiO_2ナノ粒子のスピンダイナミクスに着目し, 光電変換特性との相関を調べることである. 上記試料を作成し, 時間分解ESR測定を行ったところ, 励起三重項を特徴付けるスピン間相互作用を反映するゼロ磁場分裂が極めて小さいスペクトルを得ることができた. このスペクトルパターンは明らかに色素分子単体とは異なるものであり, スピン間距離が極めて長くなっていることを意味している. そこで得られたスペクトルを, 励起した色素分子から透明電極TiO_2へと電子移動した電荷分離状態を想定したspin correlated radical pairモデルで解析した. 実測を再現することができ, スピン間距離はおよそ10A程度になることが明らかになった. しかしながら, 光励起直後の励起三重項に由来するシグナルが観測できていないことから, 励起一重項から直接電荷分離状態へと移行した可能性を示唆した結果を得た. この電荷分離状態が効率よく生成されることが光電変換機能の向上のポイントとなる. しかしながら今回使用した色素分子(Eosin-Y)における電荷分離状態のシグナルは, 極めて弱いシグナルであった, これは, 色素分子の励起状態から直接緩和する逆変換過程が支配的になっていることを示唆している結果であり, 低い光電変換効率が低いことを裏付けていると言える. 上記の実験結果は, 色素増感太陽電池系における電荷分離状態を時間分解ESRで捉えた数少ない例の一つである.
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