2008 Fiscal Year Annual Research Report
世界文化遺産厳島神社における災害と防災及び維持活動に関する史的研究
Project/Area Number |
18760487
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
山田 岳晴 National Museum of Japanese History, 研究部, 外来研究員 (40419841)
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Keywords | 世界文化遺産 / 厳島神社 / 災害 / 防災 / 維持活動 / 海 / 文化財 / 玉殿 |
Research Abstract |
厳島神社を中心に、文化財の多くを占める木造建造物に対する防災と維持活動に関する災害回避と保護機能について検証を進め、分析を行った。 第一に、文献史料調査に関しては引き続き、厳島神社・広島大学などにおいて史料を対象とした収集作業を実施した。具体的には社務日誌などの未刊行の文書を確認した。 第二に、類例資料実地調査に関しては、出雲大社や神魂神社などの山陰地方の海岸地及び山沿いの社寺、御調八幡宮などの広島県地方の社寺について類例調査を行い、社寺などの災害と防災及び維持活動に関する文化財建造物資料の収集作業を行った。また、伝統技法に関連し木造資料調査を行い、維持活動に関しては、広島県内の中世からの港町である靹町の港湾施設や町家について分析し、当時の建築技法上の特徴を確認し補完した。 第三に、収集した資料の検証及び分析を実施した。まず、文献史料にある日常・災害時の修理の有無から、厳島神社の社殿を海上に維持するにあたり、玉殿を安置し外側に巨大な本殿とする形式が有効であったことを確認した。また、本殿内の玉殿安置形式に関する分析も行った。その結果、玉殿は安芸国に広く分布しており、厳島神社を祖型として広まったものであることが判明した。さらに、靹町の港湾施設の分析により、沿岸に建つ伝統的建造物の維持の共通点が見出された。波止においては、一定規模以上の高波について、あえて波が越えて港湾内に入ることを許容することで、建造物の維持継続を図っている。この点は厳島神社でも同様であり、海という条件を考慮した場合、ある程度の被害を許容することによって、総合的には最大限の有益性を引き出していると言える。
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Research Products
(6 results)