Research Abstract |
本研究課題では,半導体-スピン機能性デバイスの創製を目指して,磁性元素として3d遷移磁性金属であるMnを,ワイドギャップ半導体としてAlNとCu_2Oを選択し,(1)Mnを注入したAlN薄膜の結晶構造と磁気状態のMn濃度依存性と,(2)高品位なわずかにMnを注入したCu_2O(Cu_<1.99>Mn_<0.01>O)薄膜の創製とその基礎物性について検討し,以下の知見を得た. (1)Mnを注入したAlN薄膜の結晶構造と磁気状態のMn濃度依存性 Mn濃度9at.%以下の場合,結晶構造は,基板温度400℃以下ではc軸配向したウルツ鉱型AlN単相となった.また,その磁気状態は,基板温度に依存せず,室温において強磁性状態とならず,5-300Kの測定温度範囲において常磁性状態であった. (2)高品位なCu_<1.99>Mn_<0.01>O薄膜の創製とその基礎物性 結晶構造・組織は,基板温度の上昇にともない,微細な結晶粒を有する(111)配向したCu_2O単相から,粗大化した結晶粒を有するCu_2OとMn_3O_4の混相へ変化した.室温での磁気状態は,基板温度に依存せず,常磁性状態となり,低温領域での磁気状態は,基板温度の上昇にともない,常磁性状態から超常磁性状態へ,さらに強磁性的な状態へ変化した.この磁気状態の変化は,基板温度の上昇にともなう結晶構造の変化によると考えられる.また,光学特性は,基板温度に依存せず,室温では波長600nm付近に吸収端を有し,低温領域では波長700nm-900nm付近で発光した.このことから,Cu_<1.99>Mn_<0.01>O薄膜のバンドギャップはおよそ2.5eVと見積もることができた. 以上に述べた(1),(2)から,Mnを注入したAlNおよびCu_2O薄膜を,基板温度を変化させて高結晶配向化することができた.また,これらの薄膜の磁気状態は,基板温度に依存せず,室温で強磁性状態とならず常磁性状態であった.
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