2007 Fiscal Year Annual Research Report
コハクカノコ科腹足類における地下環境からの放散とその機構の解明
Project/Area Number |
18770066
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
狩野 泰則 University of Miyazaki, 農学部, 助教 (20381056)
|
Keywords | 進化生態学 / 適応放散 / 両側回遊 / 海底洞窟 / 分子系統 / アマオブネ |
Research Abstract |
コハクカノコ科の貝類は、地下環境に適応したのち、地表の河川に進出した極めて特殊な分類群である可能性が高い。平成19年度には、この可塑的進化を可能にした要因を探るため、以下の項目を実施した。 1.南太平洋のソロモン諸島、日本国内において野外調査を実施、コハクカノコ科貝類の採集を行った結果、地下水環境から新たに1未記載種を得ることができた。同種は、貝殻ならびに生殖器の形態で容易に既知種と区別できるが、他の地下水種と類似することから、これらと近縁である可能性が高い。 2.海底洞窟性のコハクカノコ科6種について形態的記載を行い、これらを4新属に分類した。さらに、既知種とあわせ各種の地理的分布をとりまとめ、原殻形態から初期発生様式の推定を行った。その結果、海底洞窟のコハクカノコ類は浮遊幼生期の長さにかかわらず広い分布をもち、何らかの方法で海洋島間を移動していることが明らかとなった。 3.これまでコハクカノコと呼ばれていた貝類を含め、アマオブネ上目の複数の両側回遊性種について、インド・西太平洋のほぼ全域から収集した標本を用い、ミトコンドリアのCOI遺伝子および核ITS領域の塩基配列を決定、集団間の遺伝的分化と幼生分散について検討した。その結果、これらの種がいずれも幼生期に極めて高い分散能力を持ち、数千キロメートル離れた地域集団間で遺伝的交流を行っていることがわかった。 4.ソロモン諸島での調査により、アマオブネ上目貝類が他個体の背中に乗って河川を長距離遡上する「ヒッチハイク」行動を行っているのを発見した。これは、コハクカノコ科貝類における環境間の特異な放散を可能とした要因のひとつである可能性がある。
|