2007 Fiscal Year Annual Research Report
限られた時間内に相同組換えが終わる仕組みと、組換えの新たな展開
Project/Area Number |
18770152
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
押海 裕之 Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 助教 (50379103)
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Keywords | DNA修復 / 自然免疫 / ウイルス / 核酸 / 細胞周期 / 組換え / 酵母 / 生体防御 |
Research Abstract |
DNAの修復に関わる分子群は、これまで放射線によるDNA障害の修復に関与すること、また、減数分裂期におこる相同染色体問での組換え反応に関わることが知られてきた。しかし、最近、DNA修復に関わる分子群が異物の核酸つまり、ウイルス由来の核酸を認識することを示唆する結果が報告されているが、その詳細な分子機構は明らかとなっていない。そこで、当該研究においては、真確生物のモデル実験系として非常に優れている出芽酵母をモデルに研究を進めたところ、興味深いことにDNAの修復の初期過程で中心的な役割をするMre11タンパク質が、レトロウイルス様のレトロエレメントであるTy1の増殖を抑制することを新たに発見した。その詳細な分子機構の解析を行ったところ、Mre11のヌクレアーゼ活性に依存した経路と、依存しない経路の両方がTy1の抑制に関わることが明らかとなった。また、Mre11分子が実際に細胞内でTy1のcDNAに結合することを染色体免疫沈降法を応用することで明らかにした。Mre11分子は宿主のゲノム断片の末端に結合すると、細胞周期停止のシグナルを出しRAD53のリン酸化を誘導するが、Mre11はTy1のcDNA末端に結合するもののRAD53のリン酸化を引き起こさないことがわかった。つまり、Mre11分子は宿主と外来の核酸の末端を区別して認識し、宿主のゲノム末端を認識したときのみ細胞停止のシグナルを出すと考えられる。 Mre11分子はヒトにも存在し、アデノウイルスのゲノム末端に結合することが報告されていることから、当該研究で得られた成果から、Mre11分子が実は宿主と外来のウイルスの核酸を識別し、宿主ゲノム断片を認識した場合には細胞周期を停止させる一方で、ウイルスの核酸を認識した場合にはインターフェロン産生などの経路に働き得る可能性が考えられる。
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