2008 Fiscal Year Annual Research Report
宿主昆虫ゲノムに存在する共生微生物由来の転移ゲノム断片の機能の解明
Project/Area Number |
18770219
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
二河 成男 The Open University of Japan, 教養学部, 准教授 (70364916)
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Keywords | 遺伝子水平転移 / 共生 / ボルバキア / 細胞内共生細菌 |
Research Abstract |
アズキゾウムシに転移したボルバキア由来の転移遺伝子の提供元となったボルバキア共生細菌を探索した。アズキゾウムシは別系統のボルバキアに感染しており、転移遺伝子の提供元となったボルバキアは現在では共生していない。データベース検索から、北欧のアリの一種にアズキゾウムシのボルバキア由来転移遺伝子と極めて類似する配列を持つボルバキアが存在することを探し当てた。日本にいる近縁種についても、同様の転移遺伝子と類似したボルバキアを持つことを発見した。そのボルバキアの遺伝子の部分配列を決定し、現在解析を進めている。この情報を下にアズキゾウムシ転移ゲノムの遺伝子構造、分子進化を明らかにし、その機能と役割の解明を目指している。当初、予定していたアズキゾウムシでの水平転移遺伝子由来の転写産物』の同定は、polyA RNAの取得、組織別のRNA回収、5'RACE法の改善を行ったが,改善はみられなかった。先に挙げたゲノム構造をまずは明らかにし、そこから再度試みる。これとは平行して、エンドウヒゲナガアブラムシにおける細菌由来の水平転移遺伝子の同定も行った。アブラムシはブフネラという細胞内必須共生細菌を体内の菌細胞に保持している。ところが、アブラムシからはこの共生細菌由来の遺伝子を水平転移により獲得している形跡を発見できなかった。そのかわり、ボルバキアの祖先に由来する遺伝子を水平転移により獲得しており、それがブフネラが局在する菌細胞で特異的に発現していることを明らかにした。つまり、アブラムシは、ブフネラという共生細菌の維持に、別のボルバキア様の細胞から水平転移で獲得した遺伝子を利用しているのである。アズキゾウムシのボルバキア由来の転移遺伝子には、機能を持つ配列は現在発見されていないが、ボルバキア様細菌由来の遺伝子を自らの遺伝子とし、巧妙に利用している生物がいることはこれらの細菌由来の転移遺伝子が転移先で機能を持ちうることを示している.
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Research Products
(4 results)