2006 Fiscal Year Annual Research Report
神経因性疼痛に対してNCAMが担う役割の解析による治療薬の探索
Project/Area Number |
18790184
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
坂井 敦 日本医科大学, 医学部, 助手 (30386156)
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Keywords | 神経因性疼痛 / GDNF / NCAM / 脊髄 |
Research Abstract |
グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)は神経因性疼痛が慢性化した後にも疼痛緩和作用を有することが知られているが、その鎮痛機序に関しては依然として不明な点が多く残されている。最近、GDNFは従来知られていたRETとは別に細胞接着因子であるNCAMを介して細胞内へ様々な情報を伝達することが見出された。一方、我々は神経因性疼痛モデル動物で、脊髄後角においてNCAMの発現が低下し、GDNFの髄腔内投与による疼痛の緩和に伴ってNCAMの発現が回復することを見出してきた。これらの事実を踏まえ、NCAMが担う役割の解析を通して、神経因性疼痛の治療薬の探索を最終目標として研究を遂行している。今年度は、神経因性疼痛の発症・維持およびGDNFによる鎮痛効果におけるNCAMの役割を詳細に検討し、以下の結果を得た。 1.二重免疫組織化学染色により、脊髄後角の表層においてNCAMは脊髄の神経細胞及び小型の細胞体を有するIB4陽性の一次求心性線維の中枢末端に存在することを見出した。 2.アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS-ODN)によりNCAMの発現を抑制しても、痛覚過敏の発症や慢性疼痛の悪化は引き起こされなかった。 3.AS-ODNによりNCAMの発現を抑制することで、GDNFの神経因性疼痛緩和作用は消失した。 4.NCAMの作用を模倣する合成ペプチドを慢性疼痛ラットに投与することにより、NCAM刺激単独で神経因性疼痛を部分的に抑制することが見出された。 以上の結果から、GDNFによる神経因性疼痛の緩和作用にNCAMが必須であることが明らかとなり、さらにNCAMの発現低下は疼痛の発症よりもむしろ慢性化に関わる可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)