2006 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティックレベルでの癌の免疫逃避機序の解明
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18790250
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
針生 寛之 札幌医科大学, 研究員 (40404587)
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Keywords | NHC class I / 乳癌 / 前立腺癌 / ヒストン脱アセチル化 / DNAマイクロアレイ / ベータ2マイクログロブリン / 遺伝子メチル化 / クロマチン免疫沈降法 |
Research Abstract |
1 ホルマリン固定標本の免疫染色に適した抗HLA class I抗体の樹立と癌組織の免疫染色 これまで既に樹立している抗pan-HLA class I重鎖抗体EMR8-5に加えて、抗Beta2-microglobulin(B2M)抗体EMRB12を樹立した。これら2種類の抗体を用いて、腎癌、前立腺癌、膀胱癌、骨肉腫、乳癌、肺癌、大腸癌の各腫瘍サンプルの免疫染色を行い、HLA class I抗原の発現が消失している腫瘍は有意に再発率が高く、患者の予後が不良であることを明らかにした。前立腺癌と乳癌では、HLA class I発現低下もしくは消失の頻度は約8割に昇り、その原因の大部分はHLA軽鎖B2Mの発現低下であることを見出した。 2 乳癌、前立腺癌における遺伝子変化とエピジェネティック変化の解析 乳癌、前立腺癌それぞれにおいて、B2M遺伝子の遺伝子配列をシークエンスしたが、遺伝子欠失や変異は認められなかった。遺伝子メチル化阻害剤とピストン脱アセチル化阻害剤を用いた培養がん細胞株の解析を行い、B2M発現低下の原因はピストン脱アセチル化であることが判明した。凍結乳癌組織のクロマチン免疫沈降法によって、ヒト乳癌組織においてB2M遺伝子領域のピストン脱アセチル化が亢進していることを証明した。 3 ピストン脱アセチル化(HDAC)阻害剤を用いたHLA class I抗原発現の回復 HLA class I抗原の発現が低下している乳癌細胞株をSCIDマウスに移植し、HDAC阻害剤を経口投与したところ、B2Mの発現回復とともに、HLA class I抗原の細胞表面発現が回復した。 4 DNAアレイを用いた網羅的解析 乳癌細胞において、ピストン脱アセチル化によって発現が低下している遺伝子群をDNAマイクロアレイ解析によって網羅的に解析した。その結果、細胞性免疫を活性化するサイトカイン、細胞性免疫の標的抗原、MHC関連分子など、いくつかの免疫関連遺伝子が同定された。現在、クロマチン免疫沈降法によってピストン脱アセチル化の確認作業を行っている。
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