2008 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティックレベルでの癌の免疫逃避機序の解明
Project/Area Number |
18790250
|
Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
針生 寛之 Sapporo Medical University, 医学部, 研究員 (40404587)
|
Keywords | HLA / 抗原提示 / ヒストン脱アセチル化 / 免疫逃避 / ウイルス感染症 |
Research Abstract |
Epigeneticメカニズムによる癌免疫逃避と免疫療法への応用について研究を実施した。 (1)乳癌と前立腺癌においてヒストン脱アセチル化が亢進する分子機序について解析した結果、MHC class I発現低下がん細胞株においてHDAC1, HDAC3の発現亢進が認められた。また、乳がんにおけるMTA1の発現亢進がHDAC活性の増強に関与している可能性が示唆された. (2)MCF7乳がん細胞をHDAC阻害剤VPA存在下で培養し、発現が増加する遺伝子についてDNAアレイを用いてスクリーニングした。その結果、apoptosis受容体分子TRAIL受容体ファミリーと、TPBGのようながん胎児性抗原分子が見出された。また、がん幹細胞抗原SOX2もHDAC阻害剤によって発現が増強することが判明した。これらの分子は、ヒストン脱アセチル化機序によって発現が抑制され、免疫逃避に関与していると推察された。 (3)がん細胞だけでなく、さまざまなウイルス感染細胞(HIV, 麻疹ウイルス、パピローマウイルス、EBウイルス)をHDAC阻害剤存在下で培養すると、MHC class I発現が増加することが判明した。ウイルス感染細胞においてもHDAC亢進機序によって、MHCの発現が低下していると考えられ、HDAC阻害剤をウイルス感染症の治療やワクチンに適応できる可能性が示された(特許出願)。 (4)HDAC阻害剤VPAはT細胞機能、特に細胞障害活性に影響を及ぼさないことを、試験管内アッセイによって確認した。HDAC阻害剤併用ワクチン療法を開始するために、今後、動物治療モデル用いたHDAC阻害剤併用ワクチン実験を実施する予定である。
|