2006 Fiscal Year Annual Research Report
一酸化窒素合成酵素完全欠損動物の開発に基づく抗動脈硬化機構の解明
Project/Area Number |
18790518
|
Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
守下 敢 産業医科大学, 医学部, 非常勤医師 (40412639)
|
Keywords | 一酸化窒素 / 一酸化窒素合成酵素 / 遺伝子改変マウス / 動脈硬化 / 冠動脈 / レニン-アンジオテンシン系 |
Research Abstract |
一酸化窒素(NO)合成酵素(NOS)には、3種類のアイソフォームが存在する。過去に研究代表者は、内皮型NOS(eNOS)や誘導型NOS(iNOS)に加えて、神経型NOS(nNOS)も重要な血管保護作用を有することを明らかにした。しかし、抗動脈硬化機構におけるNOSシステム全体の意義は十分に解明されていない。この点を検討するために、研究代表者は、3つのNOSsがすべて欠失したNOS完全欠損マウス(トリプルNOSs^<-/->マウス)を世界で初めて創出した(PNAS2005)。本研究では、このマウスにおける血管病変形成について検討した。 最初に、自然発症の動脈硬化について検討した。オスの野生型マウズ、3種類のシングルNOS^<-/->マウス、及びトリプルNOSs^<-/->マウスを実験に使用した。血管病変形成の程度は、masson-trichrome染色及びhematoxylin-eosin染色により評価した。生後2ヶ月齢では、いずれのマウスにおいても有意な冠動脈病変は認めなかった。しかし、生後5ヶ月齢では、トリプルNOSs^<-/->マウスにおいてのみ、有意な冠動脈病変(内膜・中膜肥厚と外膜線維化)が観察された。次に、血管病変が認められない生後2ヶ月齢において、頚動脈結紮後の病変形成を検討した。頚動脈結紮2週間後の頚動脈には、eNOS欠損マウスにおいて新生内膜形成の増強が、iNOS欠損マウスでは収縮性血管リモデリングの増強が、nNOS欠損マウスでは新生内膜形成と収縮性血管リモデリングの両方の増強が認められた。重要なことに、トリプルNOSs^<-/->マウスにおける両病変形成の程度はいずれも最大であった。 以上、研究代表者は、全NOSシステムが抗動脈硬化機構において重要な役割を果たしていることを初めて明らかにすることが出来た。平成19年度は、血管病変形成の分子機構の解明を行う予定である。
|