2006 Fiscal Year Annual Research Report
抗コリン作用を持つ薬剤は統合失調症患者の老年変化を促進するか
Project/Area Number |
18790829
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
伊藤 雅之 三重大学, 医学部附属病院, 助手 (80402684)
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Keywords | 脳神経疾患 / 痴呆 / 神経科学 / 総合失調症 |
Research Abstract |
近年、抗コリン薬が認知障害を促進しうることを示すエビデンスが報告されている。2005年4月、アメリカ食品医薬局(FDA)は、高齢の認知症患者に非定型抗精神病薬を用いた場合に死亡率が上昇すると報告し、高齢の認知症患者に対する非定型抗精神病薬の使用を警告した。非定型抗精神病薬の注意喚起は、統合失調症の高齢者に対し非定型抗精神病薬を控え、定型抗精神病薬の使用を促す可能性がある。もしそうなると、定型抗精神病薬は非定型抗精神病薬に比較し錐体外路症状をきたしやすいことから、高齢の統合失調症患者に抗コリン薬の併用が今後増えることが予想される。これらのことから、高齢の統合失調症患者に抗コリン薬を使用すると認知障害を促進するかどうかを調べることが重要である。本年度の研究では、福島県立医科大学精神疾患死後脳バンクより日本の統合失調症患者死後脳を得て、それらの前頭葉でアミロイドβの沈着である老人斑の密度を、免疫組織染色を用いて験討した。本年度得られた成果は以下のとおりである。 1.日本の統合失調症患者死後脳では、アミロイドβの沈着である老人斑の密度は増えていなかった。 2.抗精神病薬の使用量と統合失調症患者の老人斑の密度との間に有意な相関を認めなかった。 3.統合失調症発症年齢と老人斑の密度との間には負の相関を認め、統合失調症患者には何らかの老人斑形成を抑制する性質がある可能性が示唆された。 4.他の認知障害を引き起こす原因タンパク質(リン酸化タウなど)の免疫染色条件を検討し決定した。
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