2006 Fiscal Year Annual Research Report
新規培養法により霊長類胚性幹細胞から調製した神経幹細胞の脊髄損傷モデルへの応用
Project/Area Number |
18791048
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
祭 友昭 首都大学東京, 健康福祉学部, 客員研究員 (90404946)
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Keywords | 移植・再生医療 / 再生医学 / 脳神経疾患 / 神経科学 / 発生・分化 |
Research Abstract |
脊髄損傷は,臨床医学の進歩に伴い生命予後が良好になってきたものの,二次障害と機能回復の限界から,神経幹細胞を基軸とした細胞移植による神経再生医療に大きな期待が寄せられている.その移植に用いる神経系細胞の供給源として,増殖能と分化能に優れた胚性幹細胞(ES細胞)は非常に有望である.これまでに我々は,アストロサイト条件培地(ACM)を用いて,マウスおよびカニクイザルES細胞から神経幹細胞と神経細胞を効率的に分化誘導できる培養法(Neural Stem Sphere(NSS)法)を報告した.本年度の研究では,ES細胞由来の神経幹細胞からアストロサイトを選択的に分化誘導する条件を検討し,ES細胞由来アストロサイトの培養上清を用いて,NSS法を再現することを目的とした.未分化なマウスES細胞のコロニーをACM中で浮遊培養し,神経幹細胞が存在する細胞凝集体であるNSSを形成せしめた.NSSをbFGF存在下で接着培養し,大量の神経幹細胞を調整した後,bFGF存在下と非存在下の無血清培地で培養したそれぞれの細胞群について解析した.神経幹細胞をbFGF非存在下の無血清培地で5日間培養した細胞群の90%以上がGFAP陽性細胞であった.また,この細胞群は,bFGF存在下で増殖させた神経幹細胞で発現するNestinのmRNA量が著しく低下し,神経細胞で発現するMAP2のmRNA量は低値であった.これらの結果から,NSS法により調整した神経幹細胞は,増殖因子を除いた無血清培地で培養することで,高率にアストロサイトへ分化することが確認された.加えて,この細胞群の培養上清をACMとして用い,マウスES細胞から神経系細胞への分化誘導が可能であることも形態学的に確認された.NSS法により分化誘導した神経幹細胞を効率的にアストロサイトへ分化誘導する系を確立した.加えて,ES細胞由来のACMでNSS法を再現することが可能であることが示唆された.
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