2006 Fiscal Year Annual Research Report
ブレオマイシン誘導アポトーシスにおけるヒストンH1.2とBak
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18791382
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岡村 裕彦 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助手 (20380024)
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Keywords | ヒストン / ミトコンドリア / アポトーシス / H1.2 / Bak |
Research Abstract |
抗癌剤であるブレオマイシン(BLM)によるアポトーシスでは,DNA傷害を受けた後,ミトコンドリアからチトクロムCが放出され,カスパーゼを活性することにより誘導される。この経路が進行するには核内でDNA傷害が生じたことを認識する分子,あるいは傷害を受けた分子そのものがミトコンドリアにその情報を伝えることが必要である。私はこのことを明らかにするために,核クロマチン構成要素であるリンカーヒストンH1.2とミトコンドリアに局在するBcl-2ファミリー蛋白Bakに着目した。H1.2は8種類のヒストンH1サブタイプの中で唯一チトクロムCの放出活性を持つ。Bakは抗癌剤を含む様々な刺激によりミトコンドリアからのチトクロムC放出を促進する。このことから,ヒストンH1.2はDNA損傷後ミトコンドリアに移行し,Bakとの相互作用によりチトクロムCを放出すると考えた。今研究ではBLM処理細胞でピストンH1.2とBakの時空間的な細胞内局在と他のアポトーシス関連現象について詳細に検討した。その結果, (1)BLMはヒストンH2AXのリン酸化とlamin B1の分解を誘導した。 (2)BLM処理細胞ではヒストンH1.2は核からミトコンドリアへ移行し,Bakと同様の局在を示した。 ヒストンH2AXのリン酸化はDNAの切断を意味している。また,核膜の構成蛋白であるlamin B1の分解は核膜の崩壊を示している。リンカーヒストンであるH12はDNAの切断によりヌクレオソーム構造から遊離し,さらに核膜の崩壊によって核外への漏出が容易になると推測される。BakはBLM処理にかかわらずミトコンドリアに局在した。以上の所見からヒストンH1.2は核内のDNA傷害の情報をミトコンドリアに伝達し,Bakなどのミトコンドリア膜に存在する因子との相互作用を介してアポトーシス促進因子の放出に関与するものと考えられる。
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