2018 Fiscal Year Annual Research Report
Probing new physics via higher order calculation of Higgs boson couplings
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18F18022
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
兼村 晋哉 大阪大学, 理学研究科, 教授 (10362609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BRAATHEN JOHANNES ALF 大阪大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-10-12 – 2021-03-31
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Keywords | ヒッグス粒子の物理 / ヒッグスポテンシャル / 量子補正 |
Outline of Annual Research Achievements |
拡張されたヒッグス模型に基づくヒッグス粒子の自己3点結合に対する2ループ補正を計算した。この結合定数はヒッグスポテンシャルの構造の探究に必要不可欠な物理量であるのみならず、電弱相転移の背後の物理と密接に関係している。特に電弱相転移の物理と関係しており電弱相転移が強い一次相転移である場合には自己3点結合に対する1ループ量子補正が極めて大きくなるため、この関係を用いて加速器実験で電弱相転移の有様を検証できる可能性がある。通常の摂動論と異なり、展開パラメータが複数ある拡張ヒッグス模型等では、1ループがツリーレベルに比べて大きくなり100%レベルのズレが生じる。本研究では2ループの効果が先行研究で知られていた1ループの効果にいかに影響を与えるかを調べるため、有効ポテンシャル法による2ループ計算を実施した。その結果、2ループ効果はヒッグスセクターにノンデカップリング特性がある場合には大きくなり得るものの、1ループ効果によるズレと電弱相転移の関係は大きく変更しないことがわかった。また、将来の精密実験によってループ内部の新物理効果の情報を引き出せることが明らかになった。成果はレター論文としてまとめ、ジャーナルに投稿中である。また、得られた成果を国際会議や研究会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請では、以下のように書いた。「本研究は世界で初めてヒッグス場が複数ある拡張ヒッグス模型に基づいたヒッグス粒子の3点結合を2ループレベルで計算する。理論の精密な予言を行うことによりLHC実験や国際線形加速器 ILC でのダブルヒッグス生成過程を通じた3点結合の検証可能性を調べる。また、重力波を用いた 電弱相転移が1次的相転移である場合の検証可能性等も研究し、多角的にヒッグスポテンシャルに迫るタイムリーで重要な研究である。初年度の2018年度は、まず文献の精査を行い、ヒッグス3点結合に対する1ループレベルの計算を確認する。ついで2ループレベルの解析的な計算(予備計算)を重ねて、くりこみスキーム等のテクニカルな部分について研究する。解析的計算の結果を吟味し、1ループの計算結果と比較する。研究の区切りごとに国内および国外の研究会や国際会議で発表を行うとともに、得られた結果をレター論文にまとめる。」ここに書いた初年度の研究は全て無事完了し、レター論文をまとめ、また成果を国際会議でも発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画初年度である2018年度は、9月着任以降、ヒッグス粒子の3点自己結合の2ループレベルの精密計算を拡張ヒッグス模型(ヒッグス2重項2個の模型及びイナート2重項模型)に基づき、有効ポテンシャル法により計算した。この研究では、1ループ補正が大きくなる場合に2ループ補正がいかにその結果を変えるかに焦点を当てて研究するため、ヒッグス場の混合が無い簡単化したケースで計算した。その結果、1ループ補正で100%のズレを与えるような場合でも、2ループ補正は10%程度にとどまることを示し、成果をレター論文としてまとめた。 今年度は、まず昨年度の成果に基づいて、計算結果と分析を詳細に説明するフル論文を執筆する。その後、自己結合を含む様々なヒッグス粒子の結合定数の1ループ補正の研究に移行する。すなわち、これまで研究代表者らが取り組んで来た、拡張ヒッグス模型におけるヒッグス結合定数への量子補正の包括的研究において、オンシェルスキームで定義され計算されたヒッグス粒子の結合定数をMSバースキームに書き換える研究を行う。さらに、ヒッグス粒子と光子との結合定数が拡張されたヒッグス模型でどのように変化するかを系統的に調べる研究も行う。成果は逐次国内外の国際会議で発表し、また論文としてまとめる。
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