2018 Fiscal Year Annual Research Report
北方アサバスカン・北トゥショーニによる彫刻文化の解明と博物館での教育普及
Project/Area Number |
18H00028
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Research Institution | 北海道立北方民族博物館 |
Principal Investigator |
野口 泰弥 北海道立北方民族博物館, 学芸員
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Project Period (FY) |
2018
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Keywords | カナダ先住民 / 彫刻 / 文化人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はカナダ・ユーコン準州の先住民である北トゥショーニの彫刻文化について、その①歴史、②制作様式と技術、③現地社会での役割について解明し、北米先住民文化の多様性を紹介する博物館での教育活動に活用することを目的として実施された。 現在、北トゥショーニの自治政府内で「北トゥショーニ様式」と呼ばれる彫刻が作られている。現地調査により、これは15年ほど前に考案された新しい様式であることが明らかになった。この様式の考案者である彫刻家、ユージン・アルフレッド氏は、ユーコン準州でよく作られているトリンギット族の様式で作品を制作してきたが、自身の出身民族である北トゥショーニの神話(例えばビーバーマンの物語など)を表現するために、新たな様式を考案したことがインタビューにより明らかになった。 制作技術について、アルフレッド氏の制作風景を映像で記録した。北トゥショーニ様式でもトリンギット様式でも、制作技術や道具は基本的に共通であることが明らかになった。 現在、北トゥショーニ様式の彫刻は自治政府の各所で展示されており、複数の社会的機能があることが明らかになった。第一に、神話を可視化することで親しみ易くし、次世代へ伝えるという教育的機能がある。例えば自治政府内の学校には、アルフレッド氏が生徒と共同で制作した彫刻が展示されている。第二に、自治政府や住民のシンボルとしての機能、第三に、外部社会に北トゥショーニとしてのエスニック・アイデンティティを示す媒体としての機能があると考えらえる。 北米北方地域の先住民による彫刻はこれまで、トリンギットやイヌイトといった沿岸部の民族に関する研究に集中し、北トゥショーニのような内陸部の民族に関するものは少ない。本研究により、内陸部の民族誌情報をある程度補うことができた。 研究実施期間中に研究成果の一部を博物館での市民向け講座に利用した。今後、展示活動にも活用していく予定である。
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Research Products
(8 results)
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