Outline of Annual Research Achievements |
琵琶湖の変遷と古琵琶湖層群の形成, 滋賀の自然の恵みに関する単元を構築することを最終的な目標とし, 珪藻から始まる「食物をめぐる生物どうしのつながり」について, コアユの食物連鎖に関する新たな探究的教材・教具の開発を行い, 研究授業実践を行った。 授業でのコアユの消化管に含まれる内容物の観察を通して, 自然体験や直接的体験の機会の充実と, 物事を多面的・多角的に捉える力の向上を重視した。具体的には, ①生徒自身が, 学習対象を実際に手に取り観察・実験できる機会を確保すること, また, その際に②郷土「滋賀」の自然を意識させるべく効果的な教具・教材の模索を行うこと, そして③それらの教具・教材を活用した探究的な理科学習の展開を図り, 生徒アンケートや記述内容, 協議会参会者の発言の分析等に基づいて, 考察場面が促されているかについて検証を試みた。 琵琶湖の環境を熟知する漁師や珪藻に関する専門家との連携を通して, 現在琵琶湖に生息する生物や古琵琶湖層群に含まれる珪藻化石から, それらの持つ情報を読み解く指標としての可能性を知るとともに, 光学顕微鏡での珪藻の同定の難しさも学ぶことができた。 実践授業における生徒観察の結果, 現生のコアユの消化管の内容物には, ミジンコを中心とした生物が含まれており, 生徒自身に琵琶湖での食物連鎖を実感として捉えさせることができた。また, 古琵琶湖層群に含まれる地層でも観察できた珪藻の仲間の一部や, 2011年頃から琵琶湖でも見られる外来種の大形植物プランクトン「ミクラステリアスハーディ」も実際に確認できた。 身近に起こる環境問題の新聞記事と, 自ら得た観察結果とを活用させることで環境に関する課題意識を持たせるとともに, 観察後に改めて生徒自身に, コアユの消化管に含まれる生物の自作ハンズオンモデルを活用させ, 自らの考えを互いに語らせることによって, 考察を促すことができた。
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