Outline of Annual Research Achievements |
クリスパー・キャス9によるゲノム編集は, 確実に目標場所に作用し, 対象となる生物種が限定されない。そのため, 画期的な技術として急速に普及し, 遺伝子工学の基本的技術となっている一方, ヒト受精卵で実施されており, 倫理的問題も大きい。 この技術は, 画期的でありながら, 基礎的な知識で原理の理解が可能であり, 操作も容易である。このような最先端技術を, 高校生が体感できる教材があれば, 生命科学に夢を抱くと確信しており, 教材開発の意義は極めて大きい。そこで, 遺伝子編集の実験教材, さらに生命倫理の教材として開発することを試みた。 はじめに, ODIN社のゲノム編集に関する実験キットを用いた。しかし, このキットは, 変異体の出現により, 検証するものであった。そのため, 顕著な変化は認められず、教育的効果は弱いと判断した。そこで, クリスパー・キャス9を用いて, 特定の切断個所に, 蛍光色素タンパク質の遺伝子を組み込むことにした。しかし, 組み換え体を作成するため, 無細胞系での実験系を設定した。具体的には, pUC19のβガラクトシダーゼコードDNA(1acZ)内に切断個所を作成し, GFPコード遺伝子を組み込む操作を試みた。これにより, GFPの発現により遺伝子編集の効果が顕著に検証されることになる。しかし, 残念ながら, 完成には至っておらず, 現在も開発中である。 一方, ゲノム編集の基礎的理解や倫理面での教材の開発も進めた。WEB上には, アニメーションを伴った映像が多く存在しており, これらを活用することで効果的で容易に理解可能な教材を作成できた。また, 倫理面での教材に関しては, 中国においてヒト受精卵で実施が報道されたこともあり, 生徒達の関心も強くされており, 「どの範囲での使用は容認されるべきか」については, 白熱した議論となった。また, 制限酵素での遺伝子組み換え技術と遺伝子編集との決定的な違いである成功率を実感させられないことも課題として残っている。
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