2018 Fiscal Year Annual Research Report
顕微ラマン分光法を用いた高粘性マグマ噴火時の酸化組織形成過程の解明
Project/Area Number |
18H00243
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Research Institution | 遠軽町総務部ジオパーク推進課 |
Principal Investigator |
佐野 恭平 遠軽町総務部ジオパーク推進課, ジオパーク推進課, 公務員(技師)
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Project Period (FY) |
2018
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Keywords | 黒曜石 / 顕微ラマン分光 / 酸化組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
黒曜石とは, 粘り気の大きなマグマが溶岩として噴火した際に形成される, 大部分(>95 vol.%)がガラスで構成される岩石である. 高粘性マグマが爆発的・非爆発的噴火に至る過程を理解する上で, マグマに含まれる揮発性成分がマグマから系外へ抜けていく過程(開放系脱ガス過程)や, 開放系脱ガスに伴うマグマの酸化過程を物質科学的に明らかにすることは重要である. 本研究では, 北海道遠軽町白滝地域に噴出した赤石山山頂部溶岩を対象に顕微ラマン分光法を用いた解析を行い, ガラス中に含まれる鉄チタン酸化物マイクロライトおよび黒曜石ガラスのスペクトルデータを取得した. また, 顕微ラマン分光分析を実施した試料に対して顕微赤外分光法を用いて含水量を見積り, 結果を統合して高粘性マグマ噴火時の開放系脱ガス及び酸化過程の解明を試みた. 溶岩表層部および内部にて採取した溶岩試料について, 白滝ジオパーク交流センター所有の岩石カッター及びグラインダーを使用して厚さ100~200μmm程度の岩石チップを作成し, 最終的にダイヤモンドペーストで鏡面研磨した試料を顕微ラマン分光分析および赤外分光分析に用いた. 顕微ラマン分光分析は, 神戸大学研究基盤センター所有の顕微レーザーラマン分光装置を使用した. 分析には532[nm]グリーンレーザーを用い, シリコンを標準試料とした. 分析時は肉眼で岩石チップの赤色部および黒色部にマーキングし, マーキング内に含まれる鉄チタン酸化物及びガラス部分にレーザーを照射し, ラマンスペクトルを取得した. また, 同様のエリアに対して顕微赤外分光分析を実施した. 顕微赤外分光は関西学院理工学部環境・応用化学科所有の装置を使用した. 分析の結果, 赤色酸化したガラスの含水量は0.10-0.14[wt.%]でマグネタイト・ヘマタイト結晶を含む一方で, 赤色を呈さないガラス部分の含水量は0.04-0.09[wt.%]でマグネタイトのみを含むことが明らかとなった. これらの結果から, 黒曜石の赤色酸化組織は, 火道浅部での開放系脱ガスおよび急冷によって形成された. 一方で, 大気との接触をまぬがれた領域ではマグマの減圧・脱水が進行し, 地表下においても酸化されることなく冷却されたと考えられる.
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Research Products
(1 results)