2018 Fiscal Year Annual Research Report
ため池の微小動物消化管内酵素の性質と体外での挙動および底質改善に果たす役割
Project/Area Number |
18H00285
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Research Institution | 大阪府立今宮工科高等学校 |
Principal Investigator |
三浦 靖弘 大阪府立今宮工科高等学校, 教諭
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Project Period (FY) |
2018
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Keywords | セルラーゼ / 土壌吸着 / 酵素の真空凍結乾燥 |
Outline of Annual Research Achievements |
ため池や水路に住む甲殻類、巻貝を実験生物として、それら生物の消化管内のセルラーゼについて実験を行い次のような結果を得た。①特定の餌だけで一カ月間飼育した後、消化管内セルラーゼ活性を比較したところ、いずれもセルロースの割合が高い餌で飼育した時に活性が高くなった。巻貝より甲殻類において差が顕著であった。その際のセルラーゼ分子量をザイモグラフィーで調べたところ、餌の種類に関係なく同一種ではほぼ同じようなバンドパタンとなった。ただ、クロレラを餌としたヒメタニシが、他の餌の場合と若干異なるバンドを有していた。②微小動物を飼育していた系の底泥を、CMC水溶性内に投入し、その後生成される還元糖量を650時間以上に渡って測定した。生成される還元糖が減少に転じたら、溶液の一部を新たなCMC溶液と交換し基質が欠乏しないようにした。その結果、土壌に吸着されたセルラーゼは650時間を経過しても高い活性を維持し続けた。生成される還元糖は周期的な変動を行うが、土壌には還元糖を完全に分解する酵素も吸着されており、その活性も長期間維持されるからであると考えている。 ③粗酵素中のセルラーゼ活性を比較するには、得られた粗酵素のタンパク量を測定し、単位タンパク量あたりの活性を比較しなければならない。しかし、個人的研究においては、タンパク量の測定は煩雑なうえ試薬が高価でなかなか常套化できない。そこで、生体や土壌を真空凍結乾燥し、その単位重量あたりの活性を比較することを試みようとしている。手始めとして、甲殻類(生体そのまま)や巻貝(消化管)をPBS溶液中でホモジナイズしたものを3等分し、すぐ、冷凍後、冷凍―真空凍結乾燥後にセルラーゼ活性を比較した。その結果、いずれの場合も真空凍結乾燥後のサンプルが顕著に高い活性を示した。この原因として、ホモジナイズ溶液中のセルラーゼは沈殿した生体残滓等に相当量付着したままで反応に関与できないのに対し、真空凍結乾燥することで大部分のセルラーゼがむき出しの状態となり酵素反応が活発になったのではないかと推定している。また、セルラーゼを吸着した土壌を真空凍結乾燥すると、セルラーゼの活性が著しく低下した。この原因は不明で、今回ほとんど手がつけれなかったプロテアーゼの挙動とともに今後の検討課題である。
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