2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H00299
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
望月 俊介 東北大学, 工学研究科, 技術専門員
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Project Period (FY) |
2018
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Keywords | 質量校正 / クラスター / エレクトロスプレー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)の質量校正物質はタンパク質などが一般的であるが、長期保存が難しく高価な物質が多いため、入手しやすいカルボン酸塩などの有機塩のクラスター構造のピーク群を質量校正に利用する方法を検討した。 研究方法 LC-MSに用いられるエレクトロスプレーイオン化(ESI)ではカルボン酸ナトリウムの多量体から成るクラスター構造が観測されることから、極性溶媒に溶解しやすい過フッ化カルボン酸ナトリウムなどの有機塩を用い、濃度や溶媒の種類を変化させて効率的にクラスター構造が観測される条件を探索した。 研究成果 通常のカルボン酸と過フッ化カルボン酸を比較すると、プロピオン酸ナトリウム(C_2H_5COONa)では13量体程度(~m/z 1400)までクラスターを観測したが、ペンタフルオロプロピオン酸ナトリウム(C_2F_5COONa)では30量体程度(~m/z 5500)まで観測でき、クラスターのピークを質量校正に利用できた。アルキル基を長鎖にすると(ノナフルオロペンタン酸ナトリウム : C_4F_9COONa、ペンタデカフルオロオクタン酸ナトリウム : C_7F_<15>COONa)さらに高質量域(それぞれm/z 6900程度、m/z 8400程度)まで質量校正できた。溶媒は水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、アセトニトリルを検討し、アセトニトリルとエタノールで効率的に高質量域までクラスターが観測されることを確認した。試料濃度は1mM程度が実用に適していた。ペンタフルオロプロピオン酸ナトリウムを質量校正物質として試料(質量 約1500Da)の精密質量測定を行ったところ、誤差1ppm未満の精度で観測でき、カルボン酸塩の有効性を確認できた。 過フッ化カルボン酸塩の人体や環境への負荷を考慮し、別の物質としてβ-ジケトンのナトリウム塩(ヘキサフルオロアセチルアセトナトナトリウム)を検討すると、8量体程度(~m/z 1700)まで観測でき、有機金属錯体の新たな利用法につながる可能性も見出した。
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Research Products
(3 results)