2018 Fiscal Year Annual Research Report
有機材料評価のための既存装置を活用した新規極低加速DPC-STEM法の開発
Project/Area Number |
18H00301
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
秋本 由佳 国立大学法人東京工業大学, 技術部, 技術職員
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Project Period (FY) |
2018
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Keywords | 電子顕微鏡 / DPC / 無染色 |
Outline of Annual Research Achievements |
市販の走査電子顕微鏡(SEM)に付属する分割型走査透過電子顕微鏡(STEM)検出器の通常は使用しない機能を活用し、微分位相コントラスト(DPC : differential phase contrast)法により無染色で有機材料を可視化するという新評価法の開発を目的とした。DPC法は、磁性材料の磁場/電場を可視化する手法として知られ、特殊な装置構成や200kVという高加速電圧で用いられてきた。本研究では、従来法にはないSEMならではの低加速電圧により膜厚の違いや凹凸情報等によるDPC像の取得を試みた。 条件検討には、位相変化による電子線の偏向をDPCとして反映させるためポリスチレンラテックス球を用いた。項目としては、加速電圧、検出角、絞り径、ビーム位置、検出器の組合せ、デフォーカス量について検討した。検討の結果、透過電子を検出器にあてることは困難であったため、ビームを大きく移動して4分割された検出器の2箇所を利用して対向する信号量の差分から、位相変化量に起因するコントラストとして像取得した。その結果、ラテックス球の縁が白黒反転したDPC特有の明瞭なコントラストが得られ、30kVという低加速でDPC像を取得することに成功した。さらに応用検討として、金属固定をしていないヒトの毛髪、ネコのヒゲ、らせん形藻類(スピルリナ)について、樹脂包埋後ウルトラミクロトームにて超薄切片を作製し、無染色にて断面構造の評価を行った。いずれもDPC像が取得でき、検出器の組合せによるコントラストのつく方向が組織構造の分かりやすさを左右することもわかった。低加速電圧での観察は、より大きな位相変化量によりコントラストがつきやすくなるだけでなく、電子線照射による試料ダメージを抑制できるメリットもあるため、無染色での有機材料評価法として期待できるものと思われる。今後は、より鮮明な像が得られるように改善したい。
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Research Products
(2 results)