2018 Fiscal Year Annual Research Report
ドネペジルの抗炎症および抗うつ作用に着目した潰瘍性大腸炎治療薬としての開発
Project/Area Number |
18H00356
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
田坂 祐一 就実大学, 薬学部, 講師
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Project Period (FY) |
2018
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 腸炎関連うつ症状 / α_7ニコチン性アセチルコリン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
潰瘍性大腸炎(UC)は活動期と緩解期を繰り返す難治性の疾患であり、指定難病に指定されている。UCは指定難病306疾患の中で最も患者数が多く、また、現在の治療薬では根治は難しいことから、これまでにない作用機序を持った新規治療薬の開発が望まれている。これまでに、マクロファージに存在するα_7型ニコチン性アセチルコリン受容体(α_7nAChR)の刺激を介した抗炎症作用機序が発見され、中枢神経系から迷走神経を介した抗炎症経路が着目されている。一方で、疫学的な研究からUC患者ではうつ病を合併するケースが報告されているが、末梢の炎症と中枢の疾患との因果関係、相互の影響については不明である。そこで本研究では、中枢-末梢関連炎症に着目し、より安全な新しいタイプのUC治療薬および抗うつ薬を開発することを目的に検討を行っている。これまでの我々の研究により得られた知見も踏まえ、本年度は腸炎の症状および腸炎関連うつ症状をともに抑制する治療薬候補薬剤として、アルツハイマー型認知症治療薬であるドネペジルに着目し、検討を行った。その結果、ドネペジル1.5mg/kgあるいは1mg/kgを連日腹腔内投与することにより、5%DSSを投与することにより惹起される腸炎症状である下痢や血便が抑制された。また、いずれの用量においても、腸炎の形成に伴い観察される大腸の短縮(腸炎症状の形態学的指標)が抑制された。これらのことから、ドネペジルが腸炎抑制効果を有する可能性が示唆された。一方、精神神経領域で用いられるような高用量ドネペジルでは、副作用である体重増加抑制が認められ、臨床症状として体重減少を認めるUC治療薬として適応する場合には、用量設定に留意する必要性が示唆された。今後は、本検討によって得られた至適用量をもとに、腸炎関連うつ症状に対する行動薬理学的検討を実施することで、腸炎関連うつ症状の発症メカニズムを明らかにするとともに、真に安全で有効な新しいタイプのUC治療薬および抗うつ薬の創薬に寄与したい。
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