2018 Fiscal Year Annual Research Report
測定法別のタクロリムス測定結果に遺伝子多型が与える影響の解明
Project/Area Number |
18H00357
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松永 典子 国立大学法人長崎大学, 病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2018
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Keywords | タクロノムス / 血中濃度測定 / CYP3A5遺伝子多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】タクロリムス(以下、TAC)は、強力な免疫抑制作用を有する一方で、有効治療域が狭く、体内動態に大きな個人差が認められることなどの理由から、血中濃度モニタリング(TDM)が必要不可欠な薬剤としても知られている。現在、国内には複数のTAC血中濃度測定法が存在しており、そのうち臨床では、CLIA(chemiluminescent immunoassay)法やACMIA(affinity colum-madiatedimmunoassay)法などの免疫学的な測定法が汎用されているが、代謝物との交差反応性や非特異反応の違いから、各測定法において測定値の乖離がしばしば確認されている。2015年にACMIA法において感度や特異性が改善された新しいタクロリムス測定試薬(改良ACMIA法)が発売されているが、現在のところ改良ACMIA法とCLIA法における測定値乖離例の報告はない。また、タクロリムスの薬物動態に影響する因子の一つとして、薬物代謝酵素であるCYP3A5の遺伝子多型が挙げられ、これらの遺伝子多型が測定値の乖離に影響している可能性を考え、CYP3A5の遺伝子多型別にCLIA法とACMIA法の測定値の相関を確認した。【研究方法】長崎大学病院にてCLIA法にてタクロリムス血中濃度の測定を行った検体の中から任意に485検体抽出し、改良ACMIA法による測定を行った。また、CYP3A5の遺伝子多型による代謝物の差による交差反応性の違いの影響を明らかとするため、同意が得られた患者のCYP3A5の遺伝子多型を調査した。【研究成果】改良ACMIA法とCLIA法による測定結果は高い相関性を示したが、全検体のおよそ18%において、25%以上乖離を示す検体が認められた。その場合、改良ACMIA法の測定値が高値となる頻度が高かった。遺伝子多型別で改良ACMIA法とCLIA法での相関の傾きに大きな差が認められなかったことから、改良ACMIA法で高値を示す原因として、CYP3A5の遺伝子多型による代謝物との交差反応の影響は小さいと考えられた。乖離の原因として、測定値が大きく乖離した1症例では、改良ACMIA法の測定において血漿中の濃度が高値を示したことから、血漿中の何らかの物質と非特異反応を起こしている可能性が推察され、今後非特異反応の原因物質について検討を行う予定である。
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Research Products
(1 results)