2018 Fiscal Year Annual Research Report
睡眠薬摂取歴の証明に資する白髪中の薬物分布に関する研究
Project/Area Number |
18H00359
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Research Institution | 大阪府警察本部 科学捜査研究所 |
Principal Investigator |
志摩 典明 大阪府警察本部 科学捜査研究所, 主任研究員
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Project Period (FY) |
2018
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Keywords | 睡眠薬 / 毛髪 / 白髪 |
Outline of Annual Research Achievements |
分析試料の1つとして挙げられる毛髪は、性犯罪事案で被害申告が遅れたケースでは薬物検出が可能な唯一の試料であるほか、摂取時期の証明にも有用な試料である。これまでに我々は、薬物の摂取時期を証明するうえで欠かせない毛髪中への薬物の取り込み経路について、MALDI-MSによるイメージング分析及びLC-MS/MSによる定量分析を活用して検討を重ね、薬物は少なくとも2つの経路{経路① : 毛球部位(毛根の底部)、経路② : 頭皮近接部位(毛根の上部)}を介して取り込まれることを示していた。これらの成果は、摂取時期推定の高度化に貢献している。 本研究ではさらに、白髪が鑑定資料となることを想定し、白髪と黒髪の薬物分布の差について検討した。白髪はメラニン色素(毛髪の黒色色素)が欠落しているため、黒髪と比べて薬物の含有量が顕著に少なく、現在のところ白髪での摂取歴の証明は困難であると考えられている。しかしながら、薬剤の一部は取り込まれていることが立証されているため、白髪中の薬物の分布形状を観察することにより、摂取時期の推定に活用できる可能性があった。 そこで、薬物摂取後12時間~35日の白髪及び黒髪について経時的に薬物分布を観察した。その結果、黒髪では経路①及び②からの取り込みが確認されたのに対し、白髪では経路②からの取り込みのみが確認され、経路①からの取り込みは観察されなかった。従って、経路①からの取り込みは薬物とメラニン色素との相互作用に因るものと示唆された。一方、経路②からの取り込みにはメラニン色素の直接的な関与はなく、皮脂や汗等の毛髪への浸潤によって取り込まれるものと考えらえた。以上の結果、白髪は摂取歴の推定に活用可能であることが示唆されると共に、経路①及び②を介した薬物の取り込みは、全く異なる機構であることが示された。 本研究で得られた結果は、性犯罪捜査のための貴重な知見になるものと考えられる。
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Research Products
(2 results)